第28話
急に目の前に近づいた九条さんの顔。
痛いくらいに心臓が一気に弾んだ。
息が止まるような感覚。
けれど、そんな私に見向きもせず、
「あっそ。」
なんて言いながら、私の肩に手を伸ばすと、
「はい、出発。」
そのまま一気にシートベルトをおろして、その差し込み口にガチャッと音をたててはめた。
その自然すぎる一連の流れに思わずフリーズしかけたけれど、ハッとして息を飲む。
「なっ…!」
我に返って、九条さんを見れば、
「子供は大人に頼ってれば良いんだよ。」
ドヤ顔にも近いそんな表情で、私の頭をグシャッと、撫でるよりも少し乱暴に扱った。
「ぐちゃぐちゃにしないで下さい!」
触れた部分が熱くて、恥ずかしくて、どうしようもないくらいに胸がドキドキ鳴っている。
顔が赤くないか心配になるくらいに。
けれど、そんな私を見て何も言わずにただ笑っている九条さんのその笑顔は、私の心に温かく溶けていく。
笑顔、初めて見た…
ただそれだけのことなのになんだか嬉しくなったなんて絶対に口が避けても言わないけど。
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