第25話
「あの、どこへ…?」
ふんわりと香る芳香剤にすらセンスを感じる。
緊張からか、窓の外から目を離せない。
「家具屋さん。」
「へ?」
なんで…?
思わず九条さんの方へと振り向いたけど、いつもと変わらない表情。
やっぱり何も言えない私は、黙ったまま再び窓の外へと視線を移した。
何…?
どうなってるわけ?
よくわからないまま、たどり着いたのは昨日、香澄と訪れたばかりのお店で…
本当にここなんだ…と、さらに私の脳内には色々な疑問が浮かび始める。
一緒に店内に入ると、九条さんが足を進める方向に黙って私は付いて行く。
それにしても…
買い物?
何か買いたい家具でもあったのかな?
それなら私、来る意味ある?
「…え、ソファー?」
九条さんが立ち止まったのは、ソファー売り場の前。
そのまま何も言わず、いくつものソファーに腰をかけ始め、
「茅野さん、ちょっとこれ座って。」
自分が腰かけたままの、そのソファーに私も座れと合図を送る。
「はい…?」
相変わらずよくわからないまま、ソファーに腰かけると、
「良いだろ?」
すぐさまドヤ顔を見せた。
「確かに良いですけど…」
言う通り、フカフカすぎず固すぎず、ちょうど良い感触のソファー。
すると、
「すみません、これと同じものお願いします。色もこれで。」
「へ?」
側にいた店員さんに声をかけて、
「ほら、次行くぞー。」
何食わぬ顔でこちらに振り向いて、また歩き出す九条さんに、私は急いでソファーから立ち上がり駆け足で付いて歩いた。
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