第15話

引越したことによって香澄とは近所になったので、とりあえず駅で待ち合わせすることにしている。


香澄とは、高校で3年間同じクラスで、とにかくとても頼りにしている友達。


今どきの女の子、って感じの見た目で勉強もできて、彼氏もいて。



充実してるって、きっと香澄のような子を言うんだなって思うの。



「千沙!」




駅についてすぐ、私に気づいた香澄が手を振ってこちらに駆け寄ってくれた。



「ごめん、待たせた?」



「私が早く来ただけだよ。」



慣れたように二人で改札を通って電車に乗り込む。


一駅隣にある大きなホームセンターへ行くため。



「で、同居生活はどんな感じ?良い人っぽい?」



期待を含むその瞳で、私を見上げる香澄とは逆にとことん、どんよりした私を見て、



「まさか性悪女だったわけ?」



「…男だったの。」



「へ?」



「女の人じゃなくて男だったの。」



一瞬、目が点になった香澄はようやく言葉の意味を理解したのか、



「まじ?」



顔つきが一気に変わった。




「男って…え?なんで?やばくない?」



香澄の言う通り、やばいにも程がある。



「待って、おじさんじゃないよね?」


おじさん…?


おじさんでは…ないよね?



「27歳だって。」



「わ…何か逆にリアル。」



ますます引いた顔で私を見る香澄の反応を見ていると、やっぱりおかしいよね…と改めて実感した。



「女の人って契約じゃなかったの?」



「それがわかんないんだよね…契約関係は全部お父さんがやってくれたし…かと言って、男の人だったなんて言えないし…。」



「あー…そっか。千沙のパパなら絶対今すぐ飛んで帰ってくるね…」



「でしょ?まさかそんなことできないじゃん。相手の人も私が男だって思ってたみたいだし、もうわけわかんない状態。」



ストレスなのは向こうも一緒なんだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る