第10話

それに…今の今まで何よりも威圧感がありすぎたせいで他のことを考える余裕がなかった。


それが少しだけ解れた今、九条さんってすごく整った顔立ち…改めて気が付いた。



鼻筋が綺麗に通っていて、目だってパッチリとはしていないけれど綺麗な二重瞼。



会社員なのだろうか…


染められることのない黒い髪は、それでもなんだかおしゃれに見える。


威圧感の原因の一つでもあるけれど、身長だって高い。



…もしや私、すごい人と一緒に暮らすのでは?



チラチラと盗み見るようにして九条さんを観察していると、



「茅野さん、付き合ってるやついる?」



へ!?


急なその質問に慌ててしまう。



格好良いなと実感したばかりの今、そんな質問で意識しないわけがない。



しかし、まさかそんなわけもなく




「ああ、干渉しないって言ったのに悪い。」



再びペンを持ち直し、



「異性はとくにここの出入禁止な。気遣うだろ。」


見当違いの言葉が返ってきた。



どういう…?



「会う時は外か男の家にして。俺も女は連れ込まない。」



「はぁ…」



意味が分からずポカンとしてしまった私に、



「意外と音、聞こえるだろ。夜は静かだからなおさら。」


視線を私から部屋に移して、さも当然のような顔をした九条さんのその態度が逆に理解できなかったのだけれど…



「な…!」



ようやく何が言いたいか理解できた私は恥ずかしさから、急に体が熱を帯びてゆくのを感じていた。

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