第9話

「昼間も言ったがお互いに干渉は一切無し。あくまでこれはただの同居だ。」



「はい。」



紙にサラサラと、文字を走らせる。


意外にもその文字がとても綺麗で、思わず二度見してしまった。



「冷蔵庫は右半分が俺、左半分が茅野さん。共有スペースの水回り関係は綺麗に保つこと。」



「はい。」



「誰かを家に泊めるのも原則禁止。契約通り、家賃光熱費は折半。駐車場代は俺が払う。」



「はい。」



淡々と九条さんが出すルールに頷いて聞く私。



「てかさ、フローリングで正座とか痛くないか?」


崩しなよ。と、九条さんに言われて初めて気がついた。



緊張のあまり、無意識に正座していたらしい。



「俺が説教してるみたいだろ」


その問に思わず視線を泳がせてしまう。



確かにそれに近い気持ちで話を聞いていたような…



とりあえず、正座していた足を崩して体育座りをした。


すると、右手に持ったままのペンを置いた九条さんは、



「…昼間は悪かったな。まさか女がいるなんて思ってなかったから少し動揺した。」



………へ?



「説明不足なのかなんなのか不動産会社にも非はあるけど…まぁ、お互いに確認ミスだったわけだからこうなった以上仕方ない。」



「そ…ですね。」



昼間からは想像もできない九条さんの態度に、開いた口が塞がらない。

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