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深早山高校は付近の公立高校の中でも比較的偏差値が高く、最寄り駅周辺も開発が進んで利便性が良いことから坂の上にあることを除くと人気の学校だった。
僕が中学時代に受験した理由はただ近いからという理由だけだったが、教育実習先としては大学側からの印象も良く、授業や生徒への対応も含めて問題が少ない。
それは実習前の打ち合わせの時も伝えられており、また実際に教壇に立つと実感する。
少なくとも授業中、あからさまに眠る生徒や雑談をする生徒はいない。
「現代の小説文化は明治維新から始まりました。それまでの江戸時代の戯作文学、『南総里見八犬伝』などですね、とは違う物語や文体を模索する流れです。維新直後はやはり欧米文化の影響は強く、多くの翻訳小説が読まれていました。皆さんも名前は聞いたことがあると思いますシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』が翻訳されたのもこの頃です」
僕が担当する現代国語において教育実習生がまず任された部分は、定期試験を作成する新島先生の妨げにならないように知識系から始まった。
黒板に事前に準備しておいた文学史の流れを書きながら、なるべく教室全域に顔が向くように意識する。三十人近くに見つめられながら物事の説明をするのは挨拶とはまた違う緊張感があった。顔や目線が教壇に置いたノートへ向かわないようにしているだけで首が凝る。
退屈な授業だろうなという自覚はある。それでも生徒達は露骨に態度を悪くする様子はなく真面目に座ってノートを取ってくれている。ありがたい話だ。
「この頃は積極的に欧米の文化や社会が取り入れられた時期でした。進んだ文明を見るとそれが素晴らしいモノ、良いモノと感じられますよね。実際に中学の歴史や日本史の授業でも学んだと思いますが、廃藩置県、四民平等、大日本国憲法の発布、身近なところではちょんまげを止めて散切り頭が流行り、洋服や洋食も取り入れられました」
僕が個人的に授業に取り入れたのは他の科目との結びつきだった。
知識を定着させる効果的な方法の一つとして、連想があると本で読んだことがある。個人的な体験としても実感できたことがあったので、創意工夫にこれを取り入れた。
だがこれが本当に効果的なのか、そして達成しているのかは自信がない。
「世の中の出来事を滑稽に描く戯作文学、政治思想の普及の為に描かれた政治小説、これらは言うなれば比喩、例え話ですね。啓蒙思想によって文学はさらに学問的に捉えられ始めます。そして次に出てきたのが写実主義、坪内逍遥や二葉亭四迷などです」
あらかじめ板書していた部分を指しながら、教壇に置いたノートのページをめくる。
「坪内逍遥は『小説神髄』の中で、小説は芸術であると説きました。人間をあるがままに描くものと考え、その方法を『当世書生気質』で記します。その考えに触発された二葉亭四迷が新たな理論を考え、実践として『浮雲』を書きます。『浮雲』で日本文学にだ調が創り出され、これを言文一致と言います。後で出てくる尾崎紅葉がである調の文体を確立することで、いまの私達が読むナニナニだ、ナニナニである、という小説の形が出来るわけですね」
黒板を指す左腕につけた腕時計を確認する。
このコマ内に予定していた内容は既に七割方終えてしまったが、授業時間はまだ半分も残っている。これから書く板書や説明を加味しても、時間は確実に余ることになる。
つまり事前に練習していたテンポよりも早過ぎるということだ。
「————ここまで一気に進めてしまいましたが、何か質問などはありませんか?」
当然、生徒達からの返答はない。
針で差すような沈黙に耐え切れず微笑んで、僕は授業を再開した。
昼休みには食堂で過ごすように決めていた。
これは新島先生に勧められた時間の使い方で、この時間を利用して生徒とコミュニケーションを図り、関係性を学ぶ機会になると言われたからだ。
深早山高校の食堂は軽食を扱う購買部の他に、うどんやカレーなどの本格的な昼食が取れる設備も充実している。体育館の半分ほどの広さに長机が可能な限り並べられており、お腹を空かせた生徒達が詰めていた。
多いのは男子生徒で、よく見ると同じ運動部員らしい髪型をした集団が固まっていたりしている。まさに高校の学食という光景である。
僕が在校していた時代と変わっていないことに少しだけ安心する。
準備と授業で煮詰まった心と肩がほぐれていくようだった。
「玲人先生ー、よかったらここどうですかー?」
どこに座ろうかとかけうどんの乗ったプレートを持って見渡していると、美術部で見知った女子生徒達が気さくに声をかけてくれた。
ありがたくその輪に混ぜてもらう。
「ありがとうお邪魔しますね。皆さんも学食なんですね」
「ですよー、うちの学食安いですからねー」
深早山高校は学年で上履きの色が違う。彼女達は担当とは別クラスの二年生だった。
「玲人先生って何の科目の先生なんですか?」
「現国ですよ」
「やっぱ美術じゃないんですねー」
「美術の授業いなかったもんね」
「やっぱ芸大とか行かないと難しいんですか?」
「絵は趣味でやる程度ですから。それに国語も好きな科目です」
「えーもったいなーい」
「あんなに上手なのにねー」
「ねー、先生で趣味とか進路悩んじゃいますよー」
賑やかに話しだす彼女達を見ていると落ち着くのはなぜだろうか。
そこには僕の知っている女子高生の姿がある。
ファッションや常識が変わっても、やはり十代の学生というものはこんな感じであるものだ。
「進路は好きに選んでいいものですから、皆さんの思い描く大学を望んでいいと思いますよ」
「でも美大とかってめちゃ難しいんですよね」
「お金もかかるって言うしー」
「浪人する度胸とかないもんねー」
高校生の時、友人と同じような会話をしたものだと懐かしくなる。
教師になることが出来れば、毎年こういった悩みを持つ生徒の相談に乗ることにもなるのだろう。その練習としては申し分のない会話だ。
「まだ一日しか美術部には行ってませんけど、皆さんの中に美大志望の方はいるんですか? 僕の時も何人かはいましたが」
三年生ならばともかく、彼女達はまだ二年生になったばかりだ。
受験などまだ遠い未来のような話だろう。
ちょっとした雑談のつもりで振った話題ではあったが、すぐに藪蛇をつついたかもしれないと身を強張らせることになる。
「んー、やっぱ貴利花ちゃん達じゃないかなー」
「あの三人は別格だもんねー」
「ガチだよねー。あの子たちに比べたら私なんて全然だし」
すぐに出てきたのはその名前。
彼女達の瞳には素直な尊敬の色があった。
「————それは水上さんや衣笠さん達のことですね?」
「ですです。玲人先生も昨日三人と話してましたよねー」
しっかり見られていたらしい。
「作品は観ていませんが、そんなに凄いんですか?」
「マジで凄いですよ。忍ちゃんは彫刻で愛梨と貴利花ちゃんは油絵なんですけどー」
「三人とも仲良くなるのがぽいって感じだもんね」
「特に貴利花ちゃんは天才って感じです。同じ歳って思えないですもん」
「あー、貴利花ちゃんはマジ凄いよねぇ」
「コンクールも一年の時に受賞たんですよー。どこかに飾ってあったと思います」
「それは凄いですね。あとで拝見させてもらいます」
三人の中でも特別視されているのはその名前だった。
水上さんが一般的な女子高生然としていないのは身をもって体験している。
しかし僕と同じ歳の彼女達とではまた受け取り方も違うはずだ。水上さんの人物像を把握するためにもこの話題を続ける。
「水上さんはどんな生徒さんなんですか? クラスを担当していますが、まだあまり話せてはいないので」
「貴利花ちゃんですか? えー? なんて言えばいいんだろ。めっちゃ美人?」
「あたし達もあんま絡みないもんね。美人なのは間違いないけど」
「普段は物静かなんですけど、話せばけっこう喋ってくれるよね。美人だけど」
同じクラスではないからか、それとも特別視をしているからかあまり彼女達は水上さんと親しくはないらしい。僕が現役の時は数も少なかったので部員同士は全員が友達のように親しかったが、今年度は多くて関係性が薄くなるのだろう。
「あっ! ほらあれだ、ほらなんだっけ、あれ」
「あれ?」
一人が何かを思い出したかのように言う。
「あれだよ、ええと、ほら、いい肌してるみたいなさー」
「えー、もしかしてそれ天才肌のこと言ってる?」
「それ! そうそれ! 天才肌!」
「ちょっとぉ、それ出てこないって結構ヤバくない? てかいい肌ってなに⁉ ヤバッ」
「しかも天才ってさっき自分で言ったんじゃん!」
「うるさいなー、出てこなかっただけでしょー。とにかく! 天才肌って感じです。でもいい子ですよ。凄く綺麗ですし、真面目だし、本当に才能あるし」
参考にするにはやや物足りない意見ではあったが、しかし水上さんへの人物像というのは何となく感じられた。同学年の彼女達からしても一風変わった存在であるらしい。
あの行動を踏まえれば納得ではあるが。
「あっ、でもアレかも」
あまり追及するのも角が立ちそうだったので話を止めようとしたところで、天才肌だと言った女子生徒がまた声をあげる。
「あれ?」
「んー、でも噂で聞いただけだからなぁ。言っていいのかわからないです」
「ちょっとぉ、そんな言い方だったら先生も気になるじゃん」
「私達でも知ってること?」
「かもしんないけどぉ、どうだろ、言っていいのかなあ」
様子を伺うようにこちらを見る女生徒。
本当は話したくて仕方がないという目をしている。
こういう時、彼女達が気にするのは自分が言ったと水上さんに伝わるかどうかだ。
悪評ならばそもそも口にしないだろうし、女子がこういう目をしている時の話題はそれなりに限られてくる。求められるのは口外しないという信用だ。
「無理に話さなくとも大丈夫ですよ。それにここで聞いたことは他で話すつもりはありません。あくまで、教師を目指す実習生として参考に伺うわけですから」
そう言うと女生徒はほっとしたようにし、周りに聞こえないように少し声の調子を落とした。
「貴利花ちゃん、あんまり男の人って好きじゃないみたいです」
「そうなんですね。まあ、そんなこともあるかもしれませんね」
あくまで意外そうに、しかしそこまで前のめりにならない態度を維持する。
実習生が生徒の恋愛事情に興味津々なのは良くない。しかしあれが異性を苦手とする女子の行いなのだろうか。要観察はこの会話だけで外すことはできなかった。
僕の素っ気ない反応は彼女にはやや物足りなかったようだが、友人達は一斉に噂話を補強していく。
「それあたしも聞いたことある。告ってくる男子をバッサリしたんでしょ?」
「バスケ部の斎藤らしいね。あいつ落ち込んでた時期あったし」
「え? 斎藤なの? 私それ知らない。三年の田辺先輩のは知ってるけど」
「てかさ、猪狩って貴利花ちゃんのことばっかり見てない?」
「わかるー、あれ絶対そうだよねー」
「全然相手にされてないみたいだけどさー」
きゃいきゃいと華やぎ始める彼女達を一歩引いたところから眺める。
容姿に優れ、才能があり、年齢問わず異性から人気があってしかし興味はない。
言葉だけ並べてみれば嫉妬や羨望を一手に引き受けそうなものだが、彼女達やクラスでそのような気配が感じられないのは人徳か、それとも逸脱感ゆえか。
それからは雑談の内容も二転三転し、僕は適当に相槌を返したり、授業が面白い先生の名前を聞いたりしながら昼食を終えた。
社会系や理科系の科目はそれぞれ専用の部屋があるが、国語や英語は一か所にまとめられていた。教員はあまり利用しないらしく普段は職員室で待機しているので、この部屋は実質僕しか利用していない。他の実習生もそれぞれ別の準備室をあてがわれているようで、こうした空き時間は一人きりになる。案内された時は取り残されたように設置されているデスクに山積みになったファイルや資料があったが、今はある程度片付けさせてもらい僕の荷物を置かせてもらっていた。
座ると悲鳴をあげる椅子に腰かける。
デスクに広げたままの教科書とノート、そして指導計画書と指導日誌。
指導日誌は一日の終わりに行われる反省会で毎日新島先生に提出しなければならず、授業の改善点を事前に洗い出しておく必要がある。
まずノートに箇条書きにしようとペンを取るが、残念なことにスラスラと反省点が浮かび上がっていった。話し方も、言葉選びも、授業時間も何もかも失敗だった。生徒の自主的な学習意欲への想起など、微塵も達成できていないだろう。時折、生徒に質問があるかどうか投げかけてみても何一つ返ってこなかったのがその証拠だった。
実習期間はたったの二週間。
実習最後には研究授業がある。実習の集大成を披露する場であるが、指導教員以外にも先生方や教頭、副校長や校長、あげくは大学の教育課程の教員まで見に来る可能性がある。果たしてそれまでにまともな授業が出来る程度にまで成長できるのか、先行きは全く見えない。
「逢坂君、いるかな?」
ドアの開く音に振り返ると、高校三年生の時に担任だった葉山栄一郎先生が立っていた。
すぐに立ち上がり挨拶をしようとすると、先生は笑って手で制止する。
「いいよそのままで。相変わらず律儀だね」
葉山先生はそのまま僕の隣にまでやってきて、机をのぞき込んだ。
「お、真面目にやってるね。感心感心」
葉山先生は初老の男性教諭で、担当科目は世界史だ。
濃い髪には白髪が混じり、長身だが僕と違ってがっちりとした体格で趣味は登山だと聞いていた。いつもニコニコと柔らかく微笑んでいて、人当たりが良く生徒からの人気も高い。
担任であると同時に、学生時代の選択科目で世界史を選んでいた僕は先生とは馴染みが深かった。個人的に進路相談をしたこともある。
授業は今でも思い返せるほど独特な指導方法で、板書もなければ教科書も開かず、先生が用意した資料を使いまるで物語を考察するかのようにして行う。当時はそのやり方が衝撃的で、暗記科目だと思っていた世界史が叙事詩のように感じられたものだ。
つまり葉山先生は、僕が教職を志望したきっかけとも言える先生である。
「どうかな、今日は確か初めての授業だっただろ? 緊張した?」
「はい。高校生とはいえ見知らぬ大勢の人の前で話すのは未経験でしたから。まだ指導教員の新島先生から評価を頂いていませんが、ちゃんと準備をしていなければ満足に話すことも出来なかったかもしれません。それでも失敗してしまいました」
科目も違うので初日の挨拶や職員朝礼の場でしか顔を合わせることがなかったが、こちらの予定を把握してもらっていたようだ。
なんとも照れくさいが、肩から首にかけての緊張がほどけていくようだった。
葉山先生は喉の奥を鳴らすように笑って肩を竦める。
「ぼくも実習生だった時はガチガチだったよ。あんまりにもガチガチだったものだから、指導教員の先生に叱られちゃったぐらいにね」
「先生が? 正直、想像できません」
「そう言ってもらえると嬉しいけどね。舌がもつれるってああいうことを言うんだろうなあって、今でも思い出しては笑っちゃうぐらいだよ。毎年こうして君達実習生を見てるとね」
悪戯っぽく笑って見せる先生の目尻に、その歴史を感じさせる小皺が刻まれる。
僕が出会った時にはすでにベテランだった葉山先生も、当然だが新人だった頃がある。
この話題も、先生の気遣いだ。
同じ職場の先輩後輩になるかもしれない新しい関係性は、教師と生徒のような大人と子供ではなくまるで社会人という一つ上のステージでの繋がりのように思える。僅かでも認められているような気がして、現金ながら心のもやが晴れていくような気がした。
「ちゃんとした教師になれるように精進します」
「うん、一緒に働けるようになるといいね」
「ありがとうございます」
「ところで逢坂君は女生徒に言い寄られていたりする?」
唐突な質問に面を喰らい、僕は間抜けにも口を半開きにして固まってしまった。
葉山先生が来たのは僕を激励するためではなくこのためだったのか?
動揺し二の句が継げないでいるのをどう感じたのか、恩師は悪戯な瞳のまま僕の肩を叩く。
「冗談だよ、何年かに一度はそんな話が出るんだ。実習生と言っても生徒からすると歳の近い先輩って印象を持たれがちだからね。逢坂君は大人びて見えるから、女子生徒から人気があるんじゃないかなって思ってたんだ」
これは遠回しな警告なのだろうか。それとも本当にただの冗談なのか?
その判断が難しくてどう返事をしていいのかわからない。
さっきも女子生徒と昼食を取ったし、美術部でも男子よりは近く接していたりする。
そして何より、水上さんだ。あれを言い寄られていると表現するのはかなり難しいところだが、すでに新島先生にも知られているのだろうか。
「まさか、そんな話があるんですか? 女子生徒と距離が近すぎると?」
恐るおそる尋ねると、葉山先生はキョトンとしてからすぐに大笑いをした。
「冗談だって言ったろ? ちょっとした雑談だよ。相変わらず真面目だね」
ツボに入ったのか先生は一頻り笑った後も、喉の奥を鳴らすように堪えながら身体を震わせる。その様子に思わず安堵の溜息を深々と吐いてしまう。
どうやら水上さんのことは問題になっていないらしい。
僕の慌てようが可笑しかったのか、先生はまた僕の肩をバンバンと叩く。
存外に大きく厚い手だったので、それにも少し驚いてしまった。
「大丈夫だよ。新島先生からも真面目でしっかりしてるって聞いてる。まだ二日だけど生徒とのやり取りもちゃんと一線引いてるってさ。逢坂君は立派に先生をやってるよ」
「……心臓に悪い冗談はやめてください。授業より頭が真っ白になりました」
「そこまで生真面目さんなら安心だ。やっぱり実習生の中には生徒と距離が近すぎて問題になることもあるからね。昔はメアドとかだったけど、今はほら、SNSのアカウントとかあるでしょ? 匿名ならバレないって考えちゃう子達もいるらしいから」
「ならもっと安心できますよ。SNSはやっていませんから」
「それはそれで心配だなあ。今をトキメク大学生ならSNSぐらいやっておかないと」
「どっちなんですか」
「ピチピチの君と、教職の君は違うということさ。そろそろお暇するよ。あんまりお邪魔しても悪いだろうからね。一息つけるぐらいになったら飲みにでも行こうよ」
「お願いします。もちろん奢りなんですよね?」
「しがない平教師に奢ってもらおうとするなんて君も太くなったもんだ。じゃあ頑張ってね、何かあったらいくらでも聞きに来てもらって大丈夫だから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「真面目なのはいいけど、あまり悩まないようにね」
葉山先生は手をヒラヒラさせて、立ち去り際にまた少し思い出し笑いをしてから準備室から出て行った。扉が完全に締まるまで見送ってから、僕は椅子に身を投げ出した。
「……ふぅ」
椅子がまた抗議の悲鳴をあげるが気にしない。
深く身体を預けだらしなく口を開けたまま、天井を見上げて息を吐く。
壁に掛けられた時計を見ると昼休み終了まで残り五分となっていた。といっても午後は授業も見学も予定していない。終礼までは反省の時間が続く。
本音を言えばしばらくはこのままぼおっとしていたかったが、そうも言ってられない。指導日誌の完成、終礼の挨拶と部活動の参加、その後の反省会とやることはいくらでもある。
再起動のために一瞬だけ息を止めて、気合を入れ直すように勢いよく居住まいを正した。
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