第2話 しょうへいと淳子
次の日、俺は、公園へと足を運んだ、すると、今日も同じ様にベンチに腰掛けて居るおばあちゃんの姿があった。
「おばあちゃん!今日も居んの?」
おばあちゃんは、俺に深々と頭を下げた。
「私は、ずっとここに居ますよ…ずっとね…」
「おばあちゃんさ昨日の続き話してよ!あの後どうなったか気になっちゃってさ!」
「いいですよ…」そう言うとおばあちゃんは、話し始めた。
「あれは、そう…私としょうへいさんが成人した年の事でしたね…」
しょうへいさんとおばあちゃんは、高校を卒業後、同棲して二年が経った時だと言う。しょうへいさんは、大工見習いとして働きだし、おばあちゃんは、しょうへいさんを支える為スーパーでパートをしていたらしい、裕福な暮らしでは、なかったが二人は、一緒に居ればそれで良かったらしいそして、ある日の夜の事だった…
「ただいま〜今日も疲れた…疲れた…」しょうへいさんは、靴を脱ぎ一歩踏み出そうとした瞬間…
「ちょっと待った!先に靴下脱いで下さい!しょうへいさんの足臭いんですから!」
「頑張って来たんだから勘弁してくれよ」と言い靴下をおばあちゃんに手渡した。
「そうは、言ってもしょうへいさんの足の匂いの中でご飯食べたくないでしょウォロロロロロロ」おばあちゃんは、すぐさま洗面台に頭を突っ込み嘔吐したと言う。
「そんな臭いか?」
「クチャい…」おばあちゃんは、鼻をつまみそう言った。
「もうすぐご飯できますからお風呂入っちゃって下さい」
「へーい」
…………………………………
しょうへいさんは、お風呂から上がるとニンニクの効いた唐揚げのいい匂いがして来る。
「おっ今日唐揚げじゃん!淳子の唐揚げ好きなんだだよな!」
「ふふ…冷めない内に食べちゃいましょ!」二人は、食卓を囲んだ。
「頂きまーす!」
「頂きます!」
「ヒィー美味そうっ」
「ふふ…」と笑った瞬間、おばあちゃんは、洗面所へと走り再び嘔吐した。
「大丈夫か?洗い足りなかったかな?……まさかっ…」おばあちゃんは、洗面所からゆっくりと恥ずかしげに顔を出した。
「へへ…出来ちゃったみたい…」
「まじか!マジかよ!」としょうへいさんは、驚きと嬉しさが入り混じった声を出していた、そして、おばあちゃんを抱きしめて持ち上げた。
「よっしゃー俺達に子供だそ!子供!」
「分かりましたから…ふふっ下ろして下さい…ふふっ」
「これが下せずにいられるか!皆んなに報告しねぇとな!」
「そうですね…ふふっ」
しょうへいさんは、真剣な顔になりこう言った。
「俺と結婚してくれ!」
「……………」
「…私でいいなら…よろしくお願いします…」おばあちゃんの嬉し涙が弾け、二人は、結婚の約束をしたらしい。
「なんかドラマの話聞いてるみたいだな!人間一人一人にドラマがあるってどっかで聞いた事あるけど、本当だったんだな!」
「私もこの時は、本当に嬉しくてね…こんなに幸せでいいのか疑っちゃうくらいに…この後、私の身体が病弱のだったせいで九ヶ月後に産気付いてしまってね…」
その日、しょうへいさんは、車を走らせ、泥だらけになったニッカポッカに身を包み病院に入っていった。そこには、しょうへいさんの両親、そして、おばあちゃんの母親が待っていた、看護師がしょうへいさんの到着を先生に告げにいく。
「しょうへい!」
「しょうへいさん」
「淳子は⁉︎」
「今先生が…」先生が手術室から出て来るのを見るなり、しょうへいさんは、先生の胸ぐらに掴み掛かった。
「先生!淳子は…大丈夫なのかよ⁉︎」
「淳子さんは、今、大変危険な状態です…………このまま出産が長引いてしまうと母体共に子供の命の危険が…」
「どっちも助けろよ…あんた…医者だろ…人を救うのが仕事だろうが…」
「全力は、尽くします……」
ピーーーーーーーーーーーー電子音が鳴り響き先生は、手術室に戻っていった。
しょうへいさんは、冷たい床に膝を突き、涙が床に溢れ落ちていた、そして、数時間の時間が経ち、手術室の扉が開き、しょうへいさんは、再び、先生に問いただした。
「じゅん…淳子は…」
「……」
「手術室は…成功です!」
「せ…先生!あんたって人は…ありがとう…ありがとう…」
「一度は、危ない所でした、戻ってこれたのは、淳子さんの精神力が強かったからでしょう、後で労ってあげて下さい」
「そうなんだよ、あいつは、強いんだよ、淳子がそんな簡単に死ぬ訳ねぇんだよ!」と嬉し涙が溢れ出していた、そして、数時間後、面会が許されたと言う。
「淳子!」
「しょ…しょうへいさん…」とおばあちゃんは、弱々しい声で答えた。
「よく頑張ったな!頑張ったな…」
看護師が赤ん坊をおばあちゃんに手渡した。
「ほら…見て下さい…可愛い…」
「しょうへいさんも…抱っこしてあげて…」しょうへいさんは、赤ん坊を抱き上げた。
「……………」
「しょうへいさん?」
「すげぇな…命ってすげぇな…こんなに小さいのに何キロあるんだよってぐらい握りやがる」
「ふふっそうですね…」
おばあちゃんは、早産だったらしい、この後、おばあちゃんとしょうへいさんは、二人の名前から一文字ずつ取り、昌子と名付け退院後三人で婚姻届けを市役所に出しに行ったと言う。
「へーおばあちゃん大変だったじゃん!おばあちゃん死んじゃうかと思ってハラハラしたよ!」
「死んじゃってたらここには、居ませんよ…」
「そらそうか…いやおばあちゃんちょっと不思議な雰囲気醸し出してるからさ幽霊かなって」
「幽霊になれたらまたしょうへさんと会えるかもしれませんね…」
「しょうへいさん死んじゃったの?あっ…ごめんなさい思い出したくないよね…」
「いいえ…しょうへいさんを思い出せるんですもの…私は、嬉しいですよ…」
「七年前やっと定年で二人で世界一周旅行に行くって言ってた矢先に癌でね…亡くなる前、最後に商店街をデートしようぜって言って約束したのにね…」
「…………」
「ここで会ったのもなんかの縁だし、俺と商店街行かない?しょうへいさんには、なれないけど俺の名前も昌平だしさ!」
「いいんですか?」
「行こ!淳子ばあちゃん!」
俺は、淳子ばあちゃんの手を取り商店街へと歩き出した。
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