6.ユウタとおばあさん②

「社会?どんな宿題だったの?」


「インタビューをしに行って、その人のお仕事について聞いた事をまとめなきゃいけないんだ。お仕事をしている人なら誰でもいいけど、お父さんお母さんとおじいちゃんとおばあちゃんはダメだって言われた。お話をしてくれる人を探すのと、どんな事を聞くのか考えるのがすっごい大変だったよ」


「小学生の宿題にしてはなかなかの難問ねぇ……。それで、ユウタくんは誰にお話を聞きに行ったの?」


「親戚の叔父さんだよ。会社でえらい人をやってるってお父さんが教えてくれて、連絡を取ってくれたんだ」


「まぁ!お父さんナイス、って感じかしら?」


「僕がお父さんに教えてもらった時と同じ事言ってるよ」


 ユウタの返事におばあさんは少し照れくさくなったのか、「まだ若い心が残っていたわ」などと言いながら、口元を押さえ笑みをこぼした。


 笑っていたと思ったら、おばあさんは目を少し大きくさせて「話を聞くなら、学校の先生に聞きに行くのが簡単なんじゃないかしら!?」と、さも名案を思いついたかのような表情でユウタの方を向く。


 その様子を見たユウタはやれやれ、と軽く首を振りながら息を吐く。


「残念。『俺たち先生に話を聞きに来るのはダメだぞ』って先生がルールを作ったからそれはキンジテになったんだ」


 ユウタは何故だか得意げな表情でそう言い、さらに続ける。


「でもその後にね、『将来学校の先生になりたい事を俺に熱く語ったら特別に話をしてやる』って言って、本当に熱く語りに行ってた子が何人かいたなぁ」


「それは先生にとって嬉しいことじゃないの」


「そうなのかな。でも、嬉しそうっていうか、ホレミロって感じでちょっとヤだったなぁ」


「教え子に慕われていると感じると、先生は嬉しくなるのよ」


ユウタは納得いかない様子で「そうなのかなぁ」と曖昧な相槌をうつ。


 もし頼れる相手がいなかったら、今頃宿題の終わらせ方に苦慮した挙げ句、先生に対して望んでもいない将来について熱弁していたかもしれないと、他人事にできなかったかもしれない未来を想像してゲンナリする。


 そんな事になるのだけは嫌だね、とリョウタとコウジと宿題が配られた日に話していたのを思い出した。


 ユウタは、おばあさんに向けていた視線を目の前に広がるひたすらに青い空に向ける。



(リョウタとコウジは宿題終わったのかな……)

 



 ふと、今日共に出かけるはずだった友人たちの事が頭に思い浮かんだ。

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