4.おばあさんとユウタ④

思いの外大きな声を出してしまった、と自身の思わぬ言動に驚く。


おばあさんは咄嗟に「ごめんなさい」と謝った。


一方、ユウタは一瞬だけ肩を上げるような仕草を見せたが、怖がるような様子ではなく相変わらず不思議そうな表情でおばあさんの事を見つめていた。


空を漂う入道雲の流れがわずかに速くなる。雲はその色を少し濃く染める。


「おばあちゃん、家族の人と何かあったの?」


「あ……」


何かを察知したユウタの問いかけにより、自分の中で芽生えていた、しかし、理解したくなかった気持ちの認識を迫られているような気がして、喉が詰まるような息苦しさをおばあさんは感じていた。


この状態の自分の事をどのように説明すればいいか言葉が定まらずにいたが、心配そうに自分の方を見つめるユウタの視線を感じ、口を開く。


ユウタもまた、おばあさんのこれまでとは少し違う雰囲気を察してじっと話を聞く姿勢をとる。


「あのね、ユウタくん」


「うん」


「一つ、謝らなきゃいけないことがあるの」


「どうしたの?」


「私、少し嘘をついているの……」



「……ウソ……?」



「そう。家族に会いに行ったって言うのは本当の事、でもね、そこでは誰ともお話もしていないし、ましてや家族と一緒にお祭りを楽しむ事もしていないの」


「なんで?せっかく一緒に過ごせるのに」


「できないのよ。私は見ているだけ、それしかできないの」


見ているだけ、その言葉に理解が追いつかないユウタに対して、おばあさんは言葉を付け加える。


「理解するのは難しいことだと思うわ。ここから先は私の独り言だと思って聞いて」


「……」


「老人の長話は嫌いかしら?」


「ううん、静かにして聞いてるよ」


「ありがとう」


先ほどまで速まっていた雲の流れはいつの間にか元に戻っていた。

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