4.おばあさんとユウタ③
気持ちを切り替えるように「でもさ」と切り出し、ユウタはおばあさんに問いかける。
「おばあさんはこんな所まで何をしに来たの?」
問いかけに対して若干困った様子のおばあさんは、言葉を選ぶ様に「ええっと……」と幾らか思考を巡らせた後にユウタの問いに答える。
「ここはね、帰り道なのよ。ちょうど私のお家へ帰る途中でユウタくんと出会ったのよ」
「帰り道?どこかへ行っていたの?」
「……ええ、家族に会いにね、えっと、息子たちのいる家までお出かけしていたのよ」
年に一回の楽しみよ、と続けるおばあさんに対してユウタが不思議そうな表情で、「何だか変わってるね」と言う。
「……そうかしら」
おばあさんは勤めて冷静に答える。
「うん。だって僕は毎年夏と冬におばあちゃんとおじいちゃんのお家に家族みんなで行ってるよ」
「おばあちゃんの方からお邪魔しにいく家族もいるのよ。それより、おじいちゃんとおばあちゃんとは今年は何をして遊んだの?それとも一緒にどこかへお出かけしたのかしら?」
「今年の夏はまだ行ってないよ。来週に行くんだ」
来週の予定を楽しそうに話すユウタを見て、おばあさんの表情が一瞬だけ歪む。
「……そっか」
おばあさんは話題を変えるキッカケを探っていたが、その心の内など知る由もなくユウタは質問を投げかける。
「おばあさんは家族とどんな事をして過ごしたの?」
「えっとね……」
答えづらそうにしているおばあさんを他所に、おばあさんの話に興味を惹かれたユウタは表情を輝かせながら答えを待っている。
その続きを待ちきれなかったユウタはおばあさんの返答を当てるように、花火はしたか、この前のお祭りには行ったか、と目を輝かせながら聞いてくる。
「……そう、お祭り!お祭りに皆で一緒にいったわ!孫が食べ盛りでね、焼きそばとかフランクフルトとか、あと、たこ焼きも。出店でたくさん食べ物を買って頬張っていたわね。渡したお小遣いが足りなくなるくらいだったわ」
「えぇ、すごいなー。僕は毎年五百円お祭りの時にお小遣いをもらえるけど、それだけ使ったらお腹いっぱいになっちゃうなー。その子はいくら分くらい食べたのかな?」
「そうね……えっと……」
なぜだか答えを言わずに表情を曇らせるおばあさんを、ユウタは不思議そうに見つめる。
「おばあさんは家族と一緒にお祭りに行くの、楽しくなかった?」
「まさか、そんなわけ無いじゃない!」
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