4.おばあさんとユウタ②

事も無げに答えたおばあさんに対してユウタはそんな馬鹿なと言わんばかりに驚きの表情をみせる。


「えぇ、あんな道をおばあさんが自分で歩いてきたの?!」


少し失礼にも取れるような反応をしたが、当のおばあさん本人はというと、「毎年の事で慣れちゃったのよ」とこれまた事も無げに答えた。


ユウタはおばあさんの返答に「人は見かけによらない……」などと言い、驚きと自分なりの尊敬の意を示してみせた。


「ふふ、どうもありがとう」


おばあさんはユウタの言葉をその思いの通り肯定的に捉え、「おまけに体力もたっぷりとあるのよ」と言いながらその場に立ち上がる。


屈伸運動や伸脚運動をしながら、「ちょっと走ってこようかしら」とランニングの姿勢をとる。


「うへぇ、僕は登ってくるまでで疲れちゃったよ」


「体力つけないと女の子からモテないわよー」


「関係あるのかなぁ」


おばあさんは「あるある、足の速い子はモテるじゃない」と言いながら、ユウタの横に再び腰を下ろす。


ユウタは、走らないんだとツッコミを入れながら、釈然としない事を示すかのように、うーんと唸る。


しかし、足の速いクラスメートが毎年バレンタインデーに女の子から沢山のチョコレートを貰っている事を思い出し、納得せざるを得ないと結論をつけた。


そのユウタの結論の腰を折るかのようにおばあさんが、「体力がある事と足が速い事が同じな訳ではないのだけどね」と付け足したことにユウタは心底呆れて、「なんだよう」と情けない声で言った。


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