4.おばあさんとユウタ①
ユウタとおばあさんは、草原に腰を下ろし談笑している。
ユウタは、自身が腰を下ろしているこの空間に対して不思議な心地よさと違和感を抱いており、早く立ち去るべきという気持ちともう少しこの景色を眺めていたいという気持ちを頭の片隅で格闘させていたが、おばあさんの気さくさがその問答の結論を先延ばしにさせていた。
(おばあさんの話し方、やっぱりさっきと少しちがうよなぁ)
隣で会話をしているおばあさんの様子をぼーっと眺めながら、先ほどおばあさんから聞かれた事を振り返る。
おばあさんの話し方が変わったと感じたのは、おばあさんが自らの事をどんな風に見えるか、と聞いてきた直後だった。
意図が分からず、改めて質問の意味を聞いたが、「ごめんなさい。今のは気にしないで、お願いよ」とはぐらかされてしまった。
ダメ元で同じ質問をもう一度したが、やはり返答は同じであった。
この直後から、おばあさんの話し方は少し変わった様に思える。
ユウタは少し不満そうな顔をしているが、困った様子のおばあさんを見て、これ以上聞いても仕方がないと諦めた。
「そう言えばさ」
ユウタが雲の動きを目で追いながらおばあさんに話しかける。
おばあさんはユウタの声に気が付かず何やら不満そうな表情でユウタのいる方とは別の場所を見つめている。
少しの後に「おばあさん?」と改めて声をかけられたことで、ようやく自分が話しかけられている事に気がついた。
反応の遅れたおばあさんは「ごめんなさい、どうしたの?」とユウタの方に慌てて向きを変え答えた。
「僕、ここにたどり着くのに結構長い間歩いたような気がするんだけど、おばあさんはどうやってここまで来たの?」
「ユウタくんと同じように歩いて来たのよ」
また風が吹く。今度は微風だった。
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