3.光を追い、彼は行く③
駆け抜けた先の景色を見てユウタは思わず感嘆した。
辺りは先が見えないくらい一面に草原が広がっており、視線を上げれば大きな入道雲をゆったりと携えた空が彼方まで続いている。
草原と空はくっきりと境界を示し、若草色と空色の重なりが視線を釘付けにする。
それまで辺りを覆っていた仄暗い不気味な雰囲気から突如として様子が変わった事、また思いもよらぬ形で得た開放感と先ほどまで無心で足を動かし続けた事で溜まった軽い疲労感も相まって、ユウタは思わず広がる草原に寝転がった。
(いい気持ちだなぁ……)
しばらく空を眺めていたユウタだったが、この場所まで駆けてきた目的を思い出し「そうだ!」、と徐ろに起き上がった。
辺りを素早く見渡すが光はどこにも見当たらない。
「頑張って追いかけてきたのに……」
ユウタは口惜しい様子で呟く。
声は空気に溶ける。
直後、風がざわめきユウタの身体を掠めてゆく。
真夏とは思えない冷たい風がユウタの肌に突き当たる。身体を抜ける風の冷たさから底しれない怖さをユウタは感じた。
自分は冷静だ、と言い聞かせるかのようにユウタは周りを見回す。
しかし、周囲を覆うのは自らが踏みしめている草原と大きな白を携えた空のみである。
ふと、ユウタは自分が今、駄菓子屋の裏手にある山を登っていた事を思い出した。
本来であれば、草原の先、山を下ったその麓には自分の住んでいる街が広がっているはずだ。
ユウタは草原の先を見下ろす。
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