第3話 初仕事_。

「ここが、世界を管理するシステムの会社_リストゥフだよ。この場所では、社長が絶対だから。それで、それなりにブラックだから。そこんとこよろしく。」

そう言って、ラム先輩はどこからともなく取り出した前世でいうエナドリを勢いよくのみ、ぷはーっと美味しそうにしている。

本当にブラックなんだ。

社長が絶対ってなんか怖い響きだな。

睡眠時間あるかな_?

食事の時間とか必要最低限の時間は取ってもらえるんだよね_?

あ、でも天使だから食事とか睡眠とか必要ないんだっけ。

私がそんなようなことを考えていると、

「それで、この会社で君には地上の管理の一環として、地上に行ってもらいます。」

と、言われた。

「え_?」

「地上に行って、何か異変がないかーとか、チェックしてきてほしいの。それで、異変が何かあったら天界の通信部にこの機器を使って連絡してから、通信部の命令に従って動いて。」

そう言って渡されたのは前世でのスマホ、と呼ばれるものに似ているものだった。

「あ、わかりました。」

「はい、それじゃ、いってらっしゃーい。」

そう言って、ラム先輩は私を雲のような地面から私を突き落とした。

「わ、わぁ!?」

私は驚いていると、地上へ体が急降下していく。

やばい。

私は急いで生えている羽を使って何とか飛ぼうとする。

頑張ってばたばたと羽を動かしていると、何とか飛べた。

あれ_?

でも、今落とされたこの世界って見た感じだと前世と同じ世界だよね_?

じゃあ、空飛ぶ天使なんて見られたら変な噂が立って目立っちゃうよね?

どうしよう?

目立たないところに着地しないと。

私はそう思い、森林のようなところを探す。

運が良かったのか、林のようなところが見つかった。

私は、その林のようなところに着地する。

そして、その林から出て情報集めに向かおうとして、ふと自分の服装を見る。

すると、先ほどまでの天界での不思議な刺繍のある着物ドレスに似た白い服ではなく、水色のシャツにうすい紫色のスカート、という現代にあった格好になっている。ラム先輩が衣装を変えてくれたのかな_?

だとしたら感謝だ。

この衣装の方が目立たずに済む。

私は、安心して聞き込みを開始することにした。

まず、情報を集めるなら新聞を読むのが一番だ。

本当はインターネットがいいのだけれど、スマホやパソコンといった機械は今は持っていないし、インターネットの情報は本当かどうかはわからないため、いまいち信用性に欠ける。だから、新聞がいいのだ。まあ、あくまで個人の意見だけど。

私は、そう思いつつ、近くの駅の新聞を売っている店に向かった。

店で、お金を払おうと、ポケットの中を探ると、百円玉が5枚入っていた。

普通にたくさんあるじゃん。

良かった。

無事に新聞を変えたので、私は駅のホームの椅子に座り、新聞を読みつつ、あたりの会話を聞こうと、耳傾ける。

周りの人の会話には意外と情報が詰まっていたりするのだ。

決して私が前世ぼっちだったことがあったから、周囲の会話を聞くのにたけているわけではないのだ。

そう、違うのだ。

周囲の会話に耳を傾けていると、

「そういえば、あの家のあの人がね__」

といったうわさ話や、

「ああ、電車間に合わないかもしれない。次の電車に乗るから_」

といった遅刻の電話をしている者など様々な話をしている者がいたが、そこに居座ること数十分ほどで、とある噂を耳にした。

それは、鬼が出る、というものである。

うわ、ばかばかしいな、と心の中で思ったのは内緒である。

しかし、この辺では行方不明者が続出しているという。

間違いなくその鬼とやらが関わっているだろう。

これは異変かもしれない。

私はそう思い、駅を出て人のあまりいない公園へ向かい、急いで通信部へ連絡をした。

「はい、もしもし。こちら通信部です。」

電話越しに男の人の声がした。

「えっと、この世界では鬼が出ていて、行方不明者が続出しているそうです。これは異変だと思います。」

「あ、えっと、世界番号を教えてください。」

少し戸惑った様子で向こうの声がそう言った。

「え?世界番号?それって何ですか?」

「もしかして君、新入り?だとしたら先輩が教えてくれなかったのかな?まあいいや、とりあえずその世界の特徴を言って。」

「えっと、たくさんのビルが建っていて、技術が進んでいて、日本、という国があって――」

私が世界の特徴を説明すると、

「ああ、ナンバー2か。オッケーありがとう。それじゃ、とりあえずそっちに武器を送っておくからそれを使って鬼を祓っといて。詳しくは説明書が書いてあるからそれを読んで。」

そう言って通信部の人は、何もこちらが返事をしていないのにぶつっ、と電話を切った。そういえば、ラム先輩が、勇者が敗北してからかなり忙しい的なことを言っていた気がする。ラム先輩の目元にはクマがあった気がするし、通信部の人もかなり忙しいんだろうな。私はそう思い、なんとなく空を見上げた。

すると、空中から謎の段ボール箱が降ってきた。

「え!?」

私は驚いてあわあわとしながらも、頑張って受け止めた。

そう言えばさっきの人、武器を送るとか言っていたな。

それがこれかな?

私はそう思いつつ、段ボールの箱を開けた。

すると、中から銀色の錫杖のようなものが出てきた。

「何これ、きれい_。」

私は思わずそう呟いてしまった。

無理もないかもしれない。

水色と銀色の混ざった美しい白銀の錫杖。

物語で見たことはあったが、実際に手にすると、その感動は言葉では表せないほどかもしれない。

私が少し涙ぐみそうになりながらも、その錫杖を見ていると、

「おい、貴様。いいにおいがするな。」

という声が背後から聞こえた。

私は急いで後ろを振り返る。

すると、そこには角の生えた人間――いや、鬼と呼ばれるものが、いた。

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転生少女、天使になった。 藍無 @270

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