第2話:崩れ始めた信念
自分の投稿が批判されたことで動揺したアオイは、それでもフォーラムでの安心感を求めていつものコミュニティに戻る。しかし、以前と同じように仲間の支持を受けても、心の中に残る疑念を拭いきれない自分に気づく。「自分の意見は本当に正しいのか?」という思いが頭から離れなくなっていた。
その日の放課後、アオイはクラスメートのミズキと偶然話す機会がある。ミズキは異なる意見や価値観に寛容で、常に他人の話を冷静に聞く姿勢を持っている子だ。アオイは、ミズキが環境問題について自分とは違う意見を持っていることを思い出し、ためらいながらも尋ねてみる。「どうしてそう思うの?」と。
ミズキはアオイに対して、環境問題における多様な視点を淡々と話し始める。特定の解決策が他の人々や産業にどんな影響を与えるか、実現可能性の面での課題、そして急進的な方法が必ずしも「正しい」わけではないことを丁寧に説明してくれた。アオイは、これまで自分が「正しい」と信じていた意見だけを支持するコミュニティに囲まれていたため、ミズキのような視点があることをまったく考えたことがなかったと感じる。
その夜、アオイは再びフォーラムにアクセスし、自分がかつて「間違っている」と切り捨てていた意見にも目を向ける決意をする。しかし、見知らぬ意見に触れることは思っていた以上に苦痛だった。自分の信じてきたことが揺らぐような感覚に襲われ、不安と葛藤が彼女の中で渦巻く。
やがて、アオイはあることに気づく。それは、フォーラム内の投稿が「いいね」や支持を得やすいものに偏っていることだ。否定的な意見や反対意見が少なく、彼女が安心感を抱いていたのは、自分と同じ考えの人が多くいるという「錯覚」に過ぎなかったのかもしれないと思い始める。アオイは、自分が一方的な意見に囲まれていた「エコーチェンバー」の中にいたことを初めて自覚し、その環境から抜け出す方法を探し始める。
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