「エコーチェンバー」

@halucabbage

第1話:エコーチェンバーの始まり

高校3年生のアオイは、あるオンラインフォーラムの人気メンバーだ。フォーラムのテーマは「社会問題の意見交換」で、政治、環境問題、ジェンダーなど、様々なトピックが毎日議論されている。アオイは、自分と同じ意見を持つ仲間と語り合えるこのフォーラムに居場所を感じていた。特に、彼女の意見に賛同してくれる仲間が多いことが、内気だった彼女にとっては大きな支えとなっていた。


ある日、アオイは自分の信念に基づき、環境問題について熱心に書き込んだ。彼女は自身の投稿が多くの「いいね」とリプライで支持されるのを見て、「自分は正しい」と確信する。そして、その日も仲間と共に同じ意見を共有し、他の意見を「間違っている」と決めつけるような発言も増えていった。アオイにとって、このフォーラムは自分が安心できる「正しさ」の場所であり、それ以外の意見には目を向けることができなくなっていた。


そんなある日、アオイの投稿が、別のフォーラムに転載される事件が起きる。そのフォーラムは異なる意見の持ち主が多く集まる場所で、アオイの書き込みに対して激しい批判が次々と寄せられた。「こんな偏った意見、よく言えるな」「自分の意見が絶対だと勘違いしている」といった厳しいコメントが並び、彼女の中で初めて、自分の意見に対する否定的な評価が「見える形」で突きつけられたのだ。


アオイは戸惑いと不安を抱えながら、これまで「自分の正しさ」を支えてくれていたフォーラムに戻るが、その違和感は消えない。他者の意見を見たことで、今まで気づかなかった自分の「偏り」に初めて向き合うきっかけとなり、彼女は何が「本当の正しさ」なのかを見極めようと模索し始める。

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