第3話 ダンジョン潜入
「ここがダンジョンの入り口………」
私は数日分の着替えと筆記用具などをリュックサックに詰めて東京の某所にあるダンジョンの入り口までやって来た。
基本的にダンジョンには「戦士」しか入れないが「戦士」を助けるための「補助員」も入ることができる。
「補助員」とは「戦士」が傷を負ったりした時に応急手当などをする人のことだ。
一般人はダンジョン内に入れないことを調べた私は「補助員」のふりをしてダンジョンに入ろうと決めた。
もちろん「補助員」も正式な資格がないとなれないが一刻でも早くモンスターお役所に就職したい私は「補助員」の資格を取る時間がない。
そこで私が考えた作戦はダンジョンに入る本物の戦士や補助員に混ざってダンジョンに侵入することだ。
戦士が単独でダンジョンに入ることはない。だから少し人数の多いグループに混ざれば私の存在は気付かれないはず。
そう思って私がダンジョンの近くで様子を伺っていると「戦士」と「補助員」と思われるグループがやって来た。
そのグループは人数もそれなりにいるのでちょうどいい。
よし! このグループに混ざろう。
私はドキドキしながら帽子を深く被ってそのグループの一番後ろにこっそりとついた。
バレないよね? 大丈夫だよね?
先頭の戦士の人がダンジョンの入り口を警備している人間に通行許可書を見せている。
もしかして全員通行許可書が必要なのかな? そしたらアウトだけど………
だが警備の人は先頭の戦士の通行許可書しか確認しないようだ。
「よし、通れ。頑張って来いよ」
警備の人はダンジョンの入り口の柵を開けてくれた。
戦士の人はみんな銃を装備してるけど補助員と思われる人は私と同じようなリュックサックを背負っているだけ。
そしてグループはダンジョンに入って行く。
ダンジョンの入り口は洞窟のような穴だ。
私も無事に警備の人の横を通り過ぎてダンジョン内に入る。
戦士の人たちはみんなライトを点ける。
するとダンジョン内が見えるようになった。
やはりダンジョン内は洞窟の中って感じ。
噂ではこのダンジョン内で爆発物を爆発させてもダンジョンの壁は壊れないらしい。
不思議な力でダンジョンはできていると言われている。
うわあ、私、あんまり洞窟とかトンネルとか好きじゃないんだよなあ。
なんかお化けが出そうだし。
まあ、お化けというかモンスターが出るんだけどさ。
私の中では「お化け」と「モンスター」はなぜか別物として認識している。
友達には「どっちも同じようなものじゃないの?」と笑われたけど。
「もう少し先まで行くぞ」
戦士のリーダーらしき人がそう声を出した。
本当にこの先にモンスターの世界があるのかな?
雰囲気だけはバッチリそんな気配があるけど。
モンスターが住んでるところだから空が血のように赤いとか。いや、血の池地獄があるのかも。
私の妄想はどんどん怖い方向に広がっていく。
「いたぞ! モンスターだ!」
「へ?」
無事にダンジョンに入れたことで油断していた私は戦士の人の言葉で我に返った。
モ、モンスターがでたの!?
素早く戦士の人たちが射撃体勢に入る。
モンスターとの戦いに巻き込まれたら大変なので私は慌てて近くの岩の陰に隠れた。
そしてそっと岩陰からダンジョンの先の暗闇を見てみる。
そこには4体のモンスターがいた。
二本足で立ってる緑色のトカゲもどきのモンスター。
狼のような四本足の獣姿のモンスター。
鎌を持った死神みたいなモンスター。
全身を鎧で固めた剣を持ってるモンスター。
ひえー! でたあーっ!! 本物のモンスターだあぁー!!
ダダッダダッダダッ!
戦士たちが銃でモンスターに攻撃を始めた。
うわあ! マジで戦ってるよおおおおぉーっ!!
戦士がモンスターと戦うのは当たり前なのに私は初めてモンスターたちとの戦いを目の前で見て頭がパニック状態になる。
モンスターを実際に見たのは初めてだし本物の銃が発射されるのを見たのも初めて。
ひいいいぃーっ! こ、怖いぃーっ!!
恐怖に襲われるがこれからモンスターの世界に行く予定の私としては本物のモンスターがどのようなモノたちなのかを知らないといけない。
震える身体を叱咤して岩陰から戦士とモンスターの戦いの様子を伺う。
モンスター側は鎧のモンスターが銃弾を跳ね返して他のモンスターを守っているようだ。
さらに銃撃の合間を見てトカゲもどきが大きな尻尾で戦士たちを跳ね飛ばす。
「ぐわ!」
戦士たちの何人かがその攻撃で後方へ吹き飛ぶ。
ひええええええーーー!!
なんて馬鹿力なんですかあああーっ!!
そして鎌を持った死神モンスターが鎌を振り下ろす。
だがその攻撃を戦士たちは巧みに避けた。
再び戦士たちが次の銃撃をモンスターたちに向けて放つ。
するとやはり鎧モンスターが銃弾から他のモンスターを守りに立ちふさがる。
「く! 今日は一度退却だ!」
戦士のリーダーは戦況は不利だと思ったようだ。
戦士も補助員も次々に撤退していく。
わ、私も逃げないと……でも、足が動かない……
私は恐怖で身体が動かなくなっていた。
待って! 私を置いて行かないで!
声を出そうとしても声が出ない。
そうこうしてるうちに戦士たちのグループは撤退してしまった。
ダンジョン内に残されたのは四体のモンスターと私。
だけどモンスターたちは私の存在にはまだ気づいていないようだ。
ああ、やっぱりモンスターお役所で働くなんて無理だったんだ。
このまま私はモンスターに食べられてしまうんだ。
私の頭に最悪の光景が浮かんだ時に暢気な声が聞こえる。
「あ~あ。今回の人間たちは弱くて助かったあ~」
「ホント、マジでダンジョン係から異動したいわ。俺」
え? この声ってまさか。
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