多数決 ~つぶやき小説

宝力黎

第1話 多数決

 D・カード前大統領が奇跡の巻き返しで次期大統領と決した。

憲法が改正され、国民の直接投票となり、高まる関心が投票率八十五%という異次元の数字をたたき出しての結果だ。

 投票総数の中の有効票は、一億二千万に達した。獲得票総数は、カードが六千百二十二万三千三百十七に対し、現職側は六千百二十二万三千三百十六だった。わずか一票の差で、カードは勝利した。

 その後何度かの再集計がされたが、スーパーコンピューターに間違いは無い。数字は変わることが無かった。

 新政権が発足し、様々な大統領令を矢継ぎ早に発した。それは前政権を根底から否定する内容のものばかりで、簡単に言えば《それまで得していた者が損をし、損を強いられていた者が得をする政治》だった。

 得する側は歓喜したが、損に回った側は大規模なデモを繰り広げ、略奪や暴動を巻き起こした。政権はそれらを国家に対する反逆行為と断じ、強硬な姿勢で臨んだ。

 損を強いられることになった側は地下に潜っての反政府運動を展開した。主な活動内容は、政府派国民の殲滅だ。国内には地獄絵図が広がり、反政府派は軍とすら戦ったが、その軍部も二派に分かれている。国内は収拾の付かない有様となった。集会で、リーダーは言った。

「いまや政府支持派は細っている!人の行き先は天国と地獄に分かれるが、神は数で勝る我が方にあり!次の選挙では必ず勝とう!」

 四年後、その言葉は実現し――。

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