第4話

この電車が長い鉄橋を渡る時、その遙か下に大きな畑が見える。



一概に茶色とも言えない、赤やオレンジ色の混じったような暖色系の色をした土はとても柔らかそうに見えた。




(落ちたら楽に死ねるのかな。…行きたいよ。)




私の心はそんなことを思っていた。




死にたくなっても実際に死ぬ勇気はないのだ。




ただ死ぬ瞬間の想像に終わってしまう。



ただ頭の中で想像する私の死は、今ここに存在している私よりもずっと暖かさに包まれているものだった。





死ぬ時は決まって夕方で、体の下にはふわふわ温かい土と、そして空には消えゆく暖かい夕陽。




だけどその時は決まって私一人きり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る