第4話 ドキドキ脱獄ゲーム〈4〉

数分前、まだあかね達の無敵時間中。


「なるほど。相手1人の体を自分の方へ向けさせる能力か。アシスト系の能力ね。

何かに使えるかも。」


そう華恋かれんが手に入れた能力を聞いて茜は答える。


(さぁ、どう作戦を組み立てよう。

・・・まてよ?そもそも、何で撃たれたのが華恋だったの?

あの時、居場所がバレてたのはワレの方だったはずなのに。

・・・しずくが見張っていた場所にたまたま華恋が現れた?

じゃぁ、何で雫はその場所を見張ってた?・・・そこに鍵があるからじゃないか?)


そう茜は推理する。


「華恋。作戦を考えた。

まず、華恋はしばらくその部屋に居て。

そして私が華恋の名前を呼んだら、能力を発動して。その後、2秒ぐらいは部屋を出ない。2秒経ったら、華恋はさっき撃たれた場所から1番近い部屋に向かって走る。この時、全速力ではなく、半分ぐらいの速さでいい、あんたのスピードなら2秒ぐらいで目的の部屋に着けるでしょ?

その部屋に多分、鍵があるはず。

それを見つけたら、ワレに報告して。

そしたらワレはわざと撃たれて捕まるから、あとは華恋が全速力で牢屋エリアに入ってワレを助ける。1分間の無敵時間で必ず脱獄できるわ。」


そう茜が自信満々に作戦を話す。



大悪手ブランダー?あんたを追い詰めてる今の状況が?」


そう茜に拳銃を向けている彩弓あみが聞き返す。


「えぇ。あんたと雫の2人をワレに集中させた時点ワレ等の勝利だったのよ。」


そう微笑みながら茜が答える。


「随分と自信満々ね。」


そう言われて茜は「えぇ」と言葉を返す。


そんな茜に華恋から報告が入る。


「茜ちゃん、鍵!!」


「え?!」


そう華恋の報告に茜は驚く。


「…まさか…められた感じ?」


そう苦笑いを作って茜は聞く。


「茜がウチの思い通りに動いてくれてたらね。」


そう笑顔で答えると彩弓は茜を撃つ。


《茜選手が確保されました。》


そうアナウンスが流れる。


「え?ウソ?!アタシまだ鍵見つけてないよ?!」


そう華恋が大きな声で驚く。


「どうしよう?とりあず助けに行った方がいいよね?牢屋に捕まってるとテレパシーでの会話はできないし。

何より…1人は寂しい。」


そう考えた華恋は全速力で牢屋エリアに向かう。


「華恋ちゃんが部屋を出た。でも速すぎて追えない。」


そう雫が報告する。


「多分、茜を助けに行ったのね。

でも、こっちからは逆側の方から牢屋エリアに入るだろうから、間に合わないか。」


そう彩弓は諦める。



「ごめん、華恋。ワレの推理が外れた。

嫌、彩弓に踊らされたと言ったほうが正しいか。わざと鍵のない部屋を雫に見張らせる事でワレを騙した。

ワレの推理力を完全にまれた。」


そう茜は華恋に謝る。


「大丈夫だよ、茜ちゃん。

まだ時間は1時間ぐらい残ってるんだから。」


そう華恋が明るい声で茜を元気づける。


その華恋の明るさに茜は微笑みを見せる。


「こっから先は鍵の場所の特定は無理だと考えた方がいい。情報が無さすぎるから。もう手当たり次第に部屋を探していくしかない。ワレがその探索をするから、華恋はワレが捕まった時にすぐに助けられるように近くの部屋に隠れてて。」


「分かった。」


そう華恋は強く頷く。


そして、2人は牢屋エリアから出る。


「じゃぁ、アタシは16番の部屋で隠れとくね。」


そう言うと華恋は16番の部屋に向かう。


「まず、この無敵時間の間に牢屋エリアから1番遠い25番の部屋に行っておきたいな。」


そう呟くと茜は25番の部屋に向かって走り出す。



「25番にもないか。」


そう茜は部屋の中を探し終える。


《囚人達の無敵時間が終了しました。》


そうアナウンスが流れる。


「こっからは慎重に部屋を出ないとね。」


そう言って茜は部屋の扉に向かう。


《華恋選手が確保されました。》


「え?!」


そう茜は大きく驚く。


「…まさか、彩弓が16番の部屋に隠れてたの?…そこまでこっちの思考を読みますか。」


そう茜は苦笑いをこぼす。


(さて、どうする?ここから牢屋エリアまでは遠いぞ。ワレのスピードだと絶対に雫に狙い撃ちされる。

・・・これ、もうみじゃね?)


そう茜の思考が止まった瞬間、息を切らせた彩弓が25番の部屋に入ってくる。


「…本当の本当に今度こそ…チェックメイトでいいかな?」


そう彩弓に聞かれて茜は両手をげる。


ゲームセット。勝者、彩弓と雫。



「で?結局、鍵は何番の部屋に隠してたの?」


そう茜が彩弓と雫に尋ねる。


「32番だよ。」


そう雫が答える。


「えぇ?!1番、出口の扉に近い部屋じゃん。」


そう華恋が大きく驚く。


「だからいいんでしょう?

スリルがあって。」


そう彩弓は微笑む。


(あぁ~。そうでした。こん人はこういう性格でしたね。)


そう茜は悔しさと呆れが混ざった不思議な感情に心を包まれる。


「どや?面白かったやろ?

ワイが作ったゲーム。」


そうゲムムが茜達に声をかける。


「うん。楽しかった。」


そう華恋が明るい声で返事をする。


「そやったら、またいつでも本開いてワイを呼んでくれや。いつでも楽しいゲーム用意したるから。ほな、元の世界に帰すで~。」


そう明るい声で言うとゲムムは指を鳴らして4人を元の世界に帰す。


「あの4人はほんまに使えるなぁ。

1回のゲームで“娯楽ごらく波動はどう”が結構貯まったわ。…今度こそ、なぁ。」


そう少し寂しそうな声でゲムムは呟く。

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