第21話
もういっそ開き直れ、てことで。深呼吸をしてから……、開始。
「ちぃーっス、たまにはキャラ変したいチャラ男の入ったシュークリーム、シューク・ベリームでぃース」
[ええ……]
[今日はそうきたか]
[チャラ男をベリーの代わりにすな]
[仕事クビにでもなった?]
「素直になれないリスナーオーケーオーケーオーケストラカモンってーーてーーてーー、てーれー、でんどんでんどんでんどん……」
今の俺はチャラ男、何も怖くない。最新のチャラ男の言動知らんけど。
いい加減に名曲口ずさみながらゲームスタート。
あの時はリスナー無視のロールプレイを始めて苦労したから、今回はいつもの俺を丸ごとチャラくしたら楽じゃね? という発想なのだ。
モードもいつもと同じ、エキシビションのソロ。他人と絡むのはリスクが高いのと、このキャラでリスナー以外の他人と話すのは流石にバッドマナーだよな。
『ヒャッホー、たーのしー』
「アハハ、ノリで飛び降りちまった。アレッ、パラシュートなくね? アレッ、他のヤツらもなくね? もしもーしそこのオネーサーン、俺たちこのまま地面にハグっスかぁ?」
[ええ……]
[ゲーム内音声に合わせる芸増やしとる]
[他プレイヤー追いかけるな]
「ハイ着地ぃ10.0、10.0、10.0出ましたベリーム選手暫定一位、お、足元に弾倉落ちてるラッキー俺モッてなくないイェー」
『撃たれてるっ』
「痛ってぇオネーサンヒドくね? 俺反撃してもいいの? やばくね? 見て見て? 弾倉。銃持ってないんかーい」
[飛ばしすぎw]
[脊髄で喋らせるとヤベーよな]
[初動被せて逃げるんかい]
「ガチギレ鬼ごっこクリアー、ここ治安悪すぎじゃね? 足立区? 新宿は多分アッチか
東京じゃねーよ、てベタなツッコミスルーしながらお散歩。
「東京時々ガチにコエーよ俺二度と東京駅行かねぇ」
観光気分で入って一瞬で迷ったナニアソコ異世界じゃん。
そういえば俺が独り言でロールプレイすると思っているのか、コメントがツッコミながらも会話を求める感じじゃないな。教育されすぎてちょっと怖いぞ。
「あ、俺と似た名の匿名サービスてこういう時に使うんスか。リアタイ(=リアルタイム)に雑談しながらコメント無視して質問に答えまーすてこの配信者壊れてんじゃね? とか思ってたマジウケ大明神」
まぁ今でも思うけど。イヤなコメントは無視すればいいのだから利用する意味がイマイチ。咄嗟の対応力に自信がない? 何故雑談選んだし。
「てか洋菓子の名前をそのまま使うネーミングのひどさがありえなくね? 俺ですらベリー加えて被らないよう気を使ってるのに雁首並べた大企業が丸パクリですか無能コールいっちゃう? あのSNS改名後もそうだけどセンスドブに捨てたっぽくね?」
世間から叩かれすぎて壊れてね? 怖いね世間ドンマイ。あと尻上がりに疑問形連発してると俺も何かが壊れそう。チャラ男甘く見ていた洋菓子だけに。
「俺ぇ、お菓子作り始めてぇ、パンナコッタリベンジしてやっから『敵を発見したぜっ』ついでにお前もリベンジされとけやぁー」
さっきの相手じゃないけど敵がいたから突撃。
「ビルにお邪魔しまーすイヤ先に邪魔したのはソッチだから。憶えてね? お前ネチマロなんでしょ俺知ってっから。人違い? イヤイヤ俺がネチマロって呼んだら確定だから。お前のせいで僕のことウニハーフって兄貴すら呼んでくるけどどうしてくれんの? て同級生に泣かれたことがあるくらい俺のネーミング完璧だから。イヤ知らねーよ俺がウニ無理って言ったらウニを食べないなんて人生の半分損してるって煽ってきたからお前の人生の半分ウニで出来てるなら今日からお前はウニハーフな、て名付けてやったのにキレるの筋違ってなくない? むしろ泣いて喜べよ『騙されたな』あー残念ソレ俺の
不規則に動く分身のフリして近寄りながら話して、スチャっと向き直ってサブマシンガンフルオート。
もちろんウニハーフもネチマロもフィクションだし倒された敵は言いがかりの極みです。配信観ていたら泣いてもいい。観ていたら分身に引っかからないけど。
[確かにネーミングセンスヤバ]
[対人攻撃力高すぎ]
[人生損してる発言消えそう]
「消えとけ消えとけ意味不明のマウントとってくるヤツこの世にいらん。あってもいいのは半分優しさで出来てるらしい風邪薬サンキューでーす」
今日はバトル仕掛けていくから狙撃はナシで動くか。
銃声聞いて早速漁夫来たホントこのゲーム小学生サッカーだな次から次へと。
それなりのプレイヤーを集めた大会だと駆け引きがあるけどココには世紀末ヒャッハーしかいない。
『騙されたな』
「一名様ゴアンナーイ」
しばらく炎が燃え広がるタイプのグレネードを目の前の床に投げて、扉越しに分身が見えるように仕掛けつつ窓から脱出。
頭の中でカウントしながら角度を調整してグレネードを窓から室内に放り投げた。
炎が消えるタイミングでダッシュ。壁を回ってさっきまで敵が待機していた入口へ。
敵は炎が消えると室内に侵入、分身に発砲、グレネード爆発を浴びて防御力激減、そこへ背後から俺に撃たれてドンマーイ。
「人気者タイヘンいつもご愛顧ありがとぅございむぁーす。一旦休憩入りまーすオツカレーカツカレーエスカレーターウィーンふぃるはーもにーてーーてーーてーー……」
分身散らして離れたもう少し広いビルに退避。敵が集まって来すぎてまともに相手してたらすぐ終わる。
しばらく中距離の撃ち合いで時間をかけていたら数が減ってきた。んじゃ頑張るか。
「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃいチャラ男サスペンス劇場開幕テテテテ、テテ、テーテー」
分身だらけのフロアーに敵侵入。入口から慎重に室内を伺っている。ソレ悪手だぞ。
「まずは一体目が突撃しまーす。よおハシビー久し振りー元気してたぁ? 人違い? なんだよさっきからみんなノリ悪くね? ホラグータッチしよーぜー『騙されたな』えー撃ってくんのヒドくね? お前どう見てもハシビーじゃん何で否定すんのホラ二体目突撃受け止めろって『騙されたな』まだ撃ってくんの疑い深いの良くないと思いまーす三体目も行くよところでハシビー、俺ばっか見てると後ろがお留守だぞ?」
プレイヤーが集まってるんだから一対一なんて滅多にないって気をつけなきゃダメだぞ。
「ハイグータッチ、からのドアロックばいばーいやっぱロクに動かねーお前はハシビロコウじゃんしらばっくれるなっての」
後ろから別プレイヤーに撃たれて慌てて室内に入ろうとしたところを、三体目は本体の俺が近づき殴って室外へ吹っ飛ばしてドアを閉めた。
ハシビー? は開き直って撃ち合うもすぐに倒れた。俺はすかさずドアオープン。
「逃げ場も体力もなく弾倉交換隙だらけのボーナスさんおつかれっシたぁ」
この人たちは目の前のことしか考えられないのかな?
まだおかわりタイムか。フロアーに分身散らして迎撃用意。
「次の獲物はぁ、あーヤバそ。一旦逃げまーす」
足音が迂回して別の出入り口へ。後続のプレイヤーを利用して俺を挟み撃ち、その後俺と撃ち合って弱った敵を倒す、要は今俺がやったことに近いことを再現しようってか、やるじゃん。
室内にいたら不利になりそうだから、さっき開け閉めしたドアから外へ。また別のプレイヤーに見つかって撃たれながら安全圏に避難した。
「あれぇ? 騙されたなって声が聞こえないのはどーゆーこと? あの室内にまだ俺の分身ギッシリ? じゃあ行くしかないっしょ」
隣りのビルからジャンプ、二階に侵入、階段から下のフロアーを覗くと、銃声で察してはいたけど障害物越しに二人が撃ち合ってた。俺の分身たちを無視して。
「では分身さんたち、やっちゃって下さい」
フロアーを走り回る分身たちに紛れて敵に近づきサクッと暗殺。フルパはともかくソロモードの分身ってわりと反則だなぁ。全然負ける気しない。
そのあとはこれといって見せ場もなく軽くスベリながらチャンピオン。
「じゃーチャラ男実況はこれにて終了。あとは普通に戻してお散歩すっぞー。満足した?」
[面白いけど普通に上手いのなんなん?]
[わりと情報多すぎ]
[台本あるよな?]
「ウチのリスナー素直に褒めてくれない問題深刻ですわ。台本は大筋は考えてるよー。全部アドリブは脳焼ける、つっても用意したネタはスベるのがお約束だけど」
コメント欄の動きが止まる数秒がスゲーやだ。心折れそうになる。
お笑い芸人ってスゴイ。
振り返りながら散歩雑談でこの日は終了。
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