第3話
前職でも上司だった彼は
俺をこの会社に誘ってくれた恩人でもある。
センター分けのボブカット、
ちなみに顎髭ほか頭髪以外のあらゆる部位は永久脱毛済み。一応本人曰く
まあ、それはともかく。
「実はずっといたんでしょう。どうして入って来なかったんですか?」
「だってぇ。あの聖女様と二人きりになるチャンスよ? 邪魔しちゃ悪いじゃない」
「ですからそういう気遣いは無用ですって、前から言ってるじゃないですか。というか……、そもそもさっきふらっと出ていったのも——」
俺の言葉に
この顔、確信犯だな。
ほんと、この人は。
俺が別れたと知るや、やたらと
「まあまあ、そんなに怒らないでよ。私だって罪悪感を感じてるんだから」
ドリップコーヒーにお湯を注ぎ終えた
「だって
「偶然タイミングが重なっただけですよ。そもそも振られたのは俺の至らなさが原因ですし、少なくとも
「そうは言うけど、やっぱりねぇ。あっ、話は変わるけど今週だったわよね? なっちゃんとの食事」
なっちゃん。
秘書課の
この前、偶然
「だから、どうしてそんなに嬉しそうなんですか……。それと勘違いしないでください。彼女とはただ
「それはどうかしらねぇ。どんな理由にせよ、なっちゃんが誰かを誘うってだけでも珍しいことだし。あ、待って。つまりもう本命は
「だから
「ま、それはそうと。今日、定時までは待ったげなさいよ? あの律儀な
「それは俺も思ってました。というか、その時
▽▲
——「こう見えて室長って何かと忙しいのよ。じゃ、今日は戸締り宜しくね」
そう言ってまたふらりと出て行ってしまった
残された俺は本日の業務を終えた3Dプリンターの手入れをしつつ、壁掛けの時計を見遣る。
もうすぐ定時だ。
さすがにそろそろ会議も終わっている頃合いだろう。
などと考えていると、廊下からこちらを覗く人影に気が付いた。
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