第12話

それから二週間後、美術選択者が


「先生休みで、自習なのはいいけど…美術だし」と言っていた。


 私は音楽選択なので知らなかったが、あれから学校に来ていないらしい。公に言われていることは体調不良とのことだ。


「保健室一緒に行ったときは元気そうだったけどなぁ…」とあのアメフト部員が大きな声で言って、こっちを見た。


 視線が合ったが、知らないふりをする。


 解雇、辞職、どうなるかは分からないけど、教師が学校に来ていないということは、あの被害者はどこかに相談できたのだろう。

 アメフト部員の視線を無視して、窓から春の空を眺めた。淡い青い空が広がっている。


「女史…あの、聞きたいことが」と日誌を手にこっちに来た。


 私が手を差し出して、日誌を渡すように言うと、驚いた顔を見せる。


「この間のお詫びに日誌、書くから。クラブに遅刻させてしまって悪かったから。早く」と言うと、素直に日誌を渡してくれるのでうっかり笑ってしまった。


「ありがとう」と言って、急いで教室を出て行った。


 その後ろ姿に、私は軽く手を振る。


 何にしろ、彼が聞きたいことなんて、答えられることが一つもない。


 日誌には「特に何もなし、いつも通り」と書いておいた。

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