第12話
それから二週間後、美術選択者が
「先生休みで、自習なのはいいけど…美術だし」と言っていた。
私は音楽選択なので知らなかったが、あれから学校に来ていないらしい。公に言われていることは体調不良とのことだ。
「保健室一緒に行ったときは元気そうだったけどなぁ…」とあのアメフト部員が大きな声で言って、こっちを見た。
視線が合ったが、知らないふりをする。
解雇、辞職、どうなるかは分からないけど、教師が学校に来ていないということは、あの被害者はどこかに相談できたのだろう。
アメフト部員の視線を無視して、窓から春の空を眺めた。淡い青い空が広がっている。
「女史…あの、聞きたいことが」と日誌を手にこっちに来た。
私が手を差し出して、日誌を渡すように言うと、驚いた顔を見せる。
「この間のお詫びに日誌、書くから。クラブに遅刻させてしまって悪かったから。早く」と言うと、素直に日誌を渡してくれるのでうっかり笑ってしまった。
「ありがとう」と言って、急いで教室を出て行った。
その後ろ姿に、私は軽く手を振る。
何にしろ、彼が聞きたいことなんて、答えられることが一つもない。
日誌には「特に何もなし、いつも通り」と書いておいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます