第10話

「でも…偶然に頼った計画で、どこまで本気だったんですか?」と私は先輩に聞いてみた。


「そんな…私は…ただ」


「ただ死んでくれたらいいのになぁ…って?」


 怯えた目から涙が溢れた。


「原因は聞きません。でも…ご自分の手を汚さなくても…とは思います。


 準備室のドアは磨りガラスです。


 人が凭れていたとしたら気が付くはずなのに、あなたは思い切りドアを開けてしまった。


 よそ見をしながら、ドアを開けた?


 だとしたら、あなたと教師はぶつかるはず…。なのに、あなたは十分な距離が保てた。


 それはあなたがドアに美術教師がいるのを分かっていて、思い切り開けたようです」


 座り込んで俯いているその手に手を重ねる。


 どうかその手を汚さないで欲しい、と願いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る