第9話
いつもどおり須藤清香の視点
背が高くて、声と肩幅の大きいアメフト部員のクラスメイトが美術教師と出ていった。
それを見届けた後、後ろの開いている窓を確認する。
一階の美術室の窓から抜け出ても外は塀になっていてそんなに人目につくことはない。
その場で座り込んでいる女子生徒にごく小さな声で言ってみた。
「え?」と言われたことに怯えるような目でこっちを見た。
確かに脅されたと思ったかもしれない。
「一年二組の須藤清香と言います」
春風が入ってくる窓を閉める。もう廊下の人だかりも解散しているようで、静かになっている。
外は眩しい光で溢れていて、気温も高くなっているのに、この教室は日当たりが悪いのか、冷んやりしていた。
座り込んでいる女子生徒のブレザーにつけられた学年章を見ると、二年生のようだった。
黒髪が長く、背中の真ん中にまで届いていて、綺麗な顔立ちをしている。
「今日は部活はないんですか?」
「…新入生に画材屋さんを紹介するって、みんなで出て行きました。私は…気分が悪くて」と俯いたまま説明してくれた。
「そうですか。…残念でしたね」とさっき言った言葉をもう一度、言ってみた。
唇を噛み締める彼女を見て、私はどうにかしてあげたいと思ったのだ。
だって、人を殺そうと思うぐらいのことをされた…その気持ちは痛いほど、分かるから…
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