第7話

同じクラスにいて、同じ駅で、全く顔を合わすこともなく、ただ同じ教室にはいる。


 そんな彼女が気になるかといえば、そうでもなくて、アメフトの部活がすぐに始まって、忙しくなった。


 授業中はうっかり居眠りをしたりして、横の美緒に起こされたり、後ろの純に椅子を蹴られたりしながら、毎日楽しく過ごしていた。


 ゴールデンウィークが明けると、クラスも馴染んでくる。外部生もあまり関係なくなっている。


 それがいつからか、須藤清香はみんなから『女史』と呼ばれるようになっていた。

 どうやら成績優秀で特待生で入ってきていたらしい。どの学科もできるが、特に英語は綺麗な英語を話す。特定の誰かと仲良くしている雰囲気はないが、誰かに何かを聞かれたら、親切に答えている。

 

 放課後、俺はクラブに行こうとしていた時に、前を歩いている女史を見つけた。社会科の先生に頼まれていたノート社会科準備室まで持っていくのだろう。手伝った方がいいのだろうか、と思って近づいて声をかけた。


「手伝おうか?」


「構いません」


 思った通り断られた。どうしようかと思っている時に、ものすごい音が聞こえて、女生徒の悲鳴が聞こえた。


「お願いします」とノートを突然、差し出された。


 俺は慌てて受け取って、女史は悲鳴が聞こえた教室のドアを開けた。

 そこには倒れた美術教師と女生徒が座り込んでいた。


「あ…あの…」


 俺は驚いて、一緒に美術室に入った。女史は黙って、あたりを見渡した。


「準備室の扉を…開けたら、突然…先生が倒れてきて…」と女生徒は震える声で話し出した。


「死んでる?」と俺が近づくと、「瞳孔見てみたら?」と女史が簡単そうに言ってきた。


「え?」


 恐る恐る近づいて、目を覗き込もうとした時、突然、うめき声が聞こえて、美術教師が生き返った。いや、生きてたんだろうな、と思ったけれど、近づいた瞬間だったので、俺の反射神経が反応して、考えより先に雄叫びをあげてしまった。

 その俺の声にその場にいた全員が驚いた。それに加えて、廊下から人が集まり出してしまった。

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