第6話
(二人を尾行しているわけじゃなくて…。ただ一緒の方向なんだ)となぜか自分に言い訳をして、電柱の陰に隠れたり時々した。
人通りの多い道から外れて、住宅街に入ってしばらくすると、流石にこれ以上の追跡は難しい。自分の帰る家は既に通り過ぎた後だった。
俺はミニチュア作家の叔母の家に下宿している。
実家は近県で、通学に割と時間がかかるので、叔母が恋人と別れたタイミングで、学校に近い叔母の家に暮らしている。
最近は新しい恋人がいるような、いないようなよく分からない感じなのだが、俺がいることで、「自分の気持ちをセーブできるから」と言っていた。
どうやら尽くし過ぎて男をダメンズにしてしまうらしい。
叔母は家の前に立っていた。叔母は三十代後半だが、穏やかな美人だ。
「何してたの。コロ助の散歩頼もうと思ってたのに」と文句を言いながらも優しい笑顔だ。
「あ…。ごめん」
「ほら、行って来て」
コロ助は俺を嫌っているようだが、散歩と聞くと飛びついてくる。
慌ててカバンを玄関に放り込んで散歩に出かけた。
今からでも二人に追いつけるかも知れないと思って、来た道をまた急いだ。
でももう二人の姿を探すことは不可能だったので、仕方なくいつもの散歩ルートに戻る。意外とご近所さんだと思いつつ、いや、関わるのはよそうと思ったのだから…と何度も同じことを考えて、時折、踏ん張って歩かないコロ助とぐるぐると歩き回った。
もしかしたら、ばったり出くわさないかと思いながら。
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