第5話

女史


 クラスメイトとマックで別れたのは夕方だった。駅前のマックだったので、二人を駅まで見送りに行く。

 俺は学校の近くの叔母の家に居候させてもらっているか徒歩で通学している。二人がホームに上がっていくのを見て、そのまま家に向かおうと歩き出した時、駅前のスーパーから出てくる須藤清香を目にした。


 スーパーの袋からはネギが飛び出していて、明らかに生活必需品を買いに来ているようだった。お使いでも頼まれたのだろうか、と思っていると、そこに背広を着た男性が走り寄った。


 背の高い男性が声をかけている。


「ナンパ?」と思って、駅の広告がついた柱から覗き見る。


 須藤清香は男性と話しているが、親そうにも迷惑そうにも見えない。


(道でも聞かれているのかな?)と思って柱の影から出ようとしたら、二人が連れ添って歩きだした。


 そしてあろうことか、スーパーの袋を男性が無理やりのような形で取り上げたので、(ひったくり?)かと、思わず近づいてしまった。


 でもそこから特に二人が離れることなく歩いている。


(一体、どういう関係なんだ?)


 二人の間には微妙な空間がある。彼らが角を曲がっていったので、なんとなくついていった。


(たまたま家の方向が同じだ…から)と自分で言い訳をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る