第2話
俺は王城から出て、その長い下り階段からこの世界を一望した。
空気が澄んでてとても気持ちいい。
石造りの地面。少し古びた白い家々。くすんだ屋根の黒瓦。ぽつぽつと並ぶ屋台。
腰を精一杯伸ばした。階段が長いからか、雲が近くに感じた。
地上に落りて、散策していると、周りの人はジロジロとこっちを見てきた。
当然だ。
浮いてる目付きの悪さ。こんな浮浪者みたいなボサボサの長い髪をしておきながら、真っ白い長Tにグレーのジップパーカー、レーヨン100%の黒い長ズボンをという、ここでは絶対に見かけない様相をしているのだから。
道の中央をモデル気分で歩いていたら、誰かが話しかけてくれた。
「おい。てめぇ、もしかして転生者か?」
どうやら、噂は一般にも周知しているらしい。
「うん、そうだけど。」
わざわざ立ち止まって返事をすることもないだろうと思っていたら、金貨100枚を託した後ろ手の右腕をがっちり掴まれて、さすがに立ち止まった。
「金いっぱい貰ってんだろ?優しい勇者様はそのお金を少しは恵んでくれねぇのかよ。」
気づけば周りも立ち止まって、観衆ができていた。
本来介入するであろう巡回警備員らしき人も、後方でつっ立って見ていた。
俺は袋を左手に預け、掴まれた手首をクルッと回して、掴み返した。
そのまま対角線の前方に思い切り引っ張ったら、俺の足に掛かって目の前で転んでくれた。
相手は唖然としていた。
前屈みになりながら、目を見開いて相手の眼球を凝視し、顔面に向かって手のひらを翳そうと伸ばした。
「お前、殺されたいのか?」
「ヒィ!」
ケツを叩かれた馬のような悲鳴を上げて、逃げていった。
(こんなハッタリが通用するのも、今だけなんだろうな……)
そう思っていたら、周りの観衆が恐怖に満ちた顔でこちらを見ているのを気づいた。
巡回警備員が、あれは正当防衛の脅しであると理解してくれて、関与してこなかったのは不幸中の幸いだった。
(さて、この2度目の人生、どう生きて、どう死のうか。
やっぱり、現実では味わえない最高のスリルを味わえる、冒険者だよな。)
異世界行っても、俺YOEEE... 孤高の弱者男性.com @kokou_jakusya
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