第8話

 『JKB』の解散を決めた。


 ただ、解散ライブは行う事にした。


 そう決めた後、皆の関係も少し良くなったと思う。

 私も本音が聞けて、色々とすっきりした。

 辛くもあったけど、知らないよりは……。



  ◇  ◇  ◇



 解散ライブ当日


 私はトイレに籠っていた。

 緊張じゃなく、感傷に浸っているだけ。


 ここに居れば、ほのちゃんは探しに来てくれるかな?

 皆は集まってきてくれるかな?

 そんな事を考え、トイレから出られなくなっていた。


 ステージに立ってしまったら――

 歌い終わってしまったら――

 ……覚悟はした筈なのに。


 「咲、居るの?」


 ほのちゃんだっ!!

 嬉しくてドアを開けようとした。

 だが、そこで手が止まった。


 「うん」

 「……初ライブの時だっけ?」

 「そうだね……」

 「あの時は”人選ミスったー”って、焦ったよ」

 「そうだったのっ!?」

 「そりゃそうでしょ?」

 「ん……まぁ」

 「それがあんな堂々と歌えるようになるんだもん。凄いよ……」


 ”凄い”本当に?

 何かの間違いだったんじゃないのか?

 未だに自信は持てない。

 それに、それが解散の原因となったのなら、その賞賛は苦痛でもある。


 「ごめん……」


 思わず謝罪の言葉を口にしてしまった。

 正解じゃ無いと気付いているのに……。


 「違う!……ううん、違わないか。でも、そうじゃなくって……。咲は凄い……もっと自信持ってよ!!そうじゃないと余計みじめじゃん」

 「ほのちゃん……」

 「本当はプロになって欲しかった。そうすれば、自慢できるし……思いっきり悔しがれた。そう出来なかったのも、何かモヤモヤしてて……ま、咲の自由なんだけどさ」



 「二人とも終わったぁ?そろそろお色直し始めたいんだけど?」


 ゆかちゃんの声が聞こえてきた。


 「ゆかっ!?いつから!?」


 その言葉を聞いてほのちゃんも気付いていなかった事が分かった。


 「だって最初の時と同じでしょ?想像つくよ」

 「今日はちょっと気合い入れたいから~、早めに準備したいんだよぉ~」


 このちゃんの声も聞こえてきた。


 皆ここにいる。


 最後のライブ前がトイレでバンド会議なんて嫌だなぁ。

 そう思った瞬間、私はトイレのドアを開け、外に出た。

 メンバーは爽やかな笑みで私を見る。


 ”さぁ、演ろうか!!”

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