第6話

 「……もう、バンド終わりにしない?」


 ほのちゃんが言った。


 

  ◆  ◆  ◆


 ――ほんの少し前――


 久しぶりのライブを終えた後、私達はカフェに居た。

 各々の新生活の出来事などが話のメイン。

 それが悪いという訳では無いけれど、敢えてバンドの話を避けているようにも感じた。

 バンドが腫れ物のようになっている状態で、私達はバンドを続けている。

 バンドじゃなければ、他愛もない世間話でしかないのに……。


 そんな中での一言だった。



  ◆  ◆  ◆



 「……何で?」


 私は思わず訊ねた。

 その先には聞きたくない答えがある気もしてたのに……。


 「何で……かぁ。そうねぇ。大学生になって、他にも色々やってみたい事とか出てきてさ。……なんか今までみたいにバンド優先っていう、気になれなくて……」

 「ほのちゃんが”やろう”って言ったんじゃん」


 私は呟いた。


 批難されているように聞こえたかもしれない。

 実際、そういう含みもあった。


 「咲は続けなよ。凄いんだし。もっと上手いメンバー集めて……」

 「そんな話してないよっ!!」


 私は性格的にも、場所的にもそぐわない大声で言った。

 周囲の視線が集まる。


 「なんていうかさぁ、結局、限界感じちゃったっていうか。私じゃ、咲の役に立てないし……」

 「だからっ!そんなこと言ってないし、頼んでない!!」

 「あのさぁ、私の気持ちも察してよ。なんか、もう、辛いの。咲とバンドやるのが。……それに、そんなにやりたいんだったら、何でオファー受けなかったの?」


 ほのちゃんは苛立ちを露わにして言う。


 「そんな気なかったもん!皆とバンドやるのが楽しかっただけだし!」

 「だから、そういうのがイラつくんだって!」


 険悪な空気を察し、このちゃんは私を、ゆかちゃんはほのちゃんを止める。

 周囲の視線に気付き、互いに一呼吸置く。


 後に、ほのちゃんは席を立ち――

 「ごめん……」と、言い残し代金を置いて店を出た。


  ◇  ◇  ◇


 ほのちゃんが去った後、残された三人で話し合った。

 そして、出した結論をほのちゃんにメッセージで送った……。



  ◇  ◇  ◇



 待つこと一週間。

 ほのちゃんからメッセージが届いた。

 グループでは無く私個人に。


 『二人で話をしたい、いつ大丈夫?』

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