天使襲来!?我が意志が、世界の命運を握る!!我ゆえに!!!





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月が高く昇る静かな夜、黒刃は町外れの丘に立っていた。紅葉もなぜか連れてこられており、彼の奇行に付き合わされている。

「ねぇ、こんな夜中にここで何する気?」

紅葉は不満げに尋ねるが、黒刃は何も答えず、ただ空を見上げていた。


その時だった。突如、夜空に裂け目が生じたかのように、光が溢れ出す。地面が震え、耳鳴りのような音が辺り一面に響く。


「来たか……最天使。」

黒刃の表情が一変し、普段のふざけた様子から一気に鋭いものになる。


裂け目の中から現れたのは、人間の想像を超えた存在だった。

無限に広がる純白の翼、そこから放たれる無数の光の矢。そしてその中央には、機械的な鎧を纏いながらも神々しさを感じさせる天使の姿が浮かび上がった。


「人類よ、これが最後の問いだ。」

その声は直接頭の中に響き渡り、膝をつかせるほどの威圧感を放っていた。紅葉は息を呑み、地面に座り込む。


「我は最天使。全ての試練を越えし者たちに最後の問いを投げかける存在。」

天使の光は黒刃に向けられる。


「影山黒刃、貴様は人類を代表してこの問いに答える覚悟があるか?」

黒刃は剣を抜き、天に掲げる。「ふっ、またやってしまったようだ……我ゆえに!」


紅葉は叫ぶ。「ちょっと、これ本気でヤバいやつじゃないの!?どうする気よ!」

しかし、黒刃は彼女に背を向けたまま、静かに呟く。

「人類が進化するためには、この存在に向き合わなければならない。紅葉、俺を信じろ。」


最天使の光が黒刃を包み込み、地面が裂けるような衝撃が起こる。丘全体が崩れ始め、紅葉は必死にその場から逃げようとするが、次の瞬間、彼女の目に映ったのは――黒刃と最天使が作り出した異次元空間だった。


空間の中で、黒刃は最天使と対峙していた。

「人類を存続させるための力を示せ。」

最天使の翼が広がり、無数の光の剣が黒刃に向かって放たれる。黒刃は影刀を構え、闇の力を解き放つ準備をする。


しかし、光の剣は彼の武器を弾き、傷つけることなく地面に突き刺さる。黒刃は眉をひそめる。

「どういうことだ……?」


最天使は微笑むように声を放つ。

「人類が進化するとは何か、まず貴様自身が問い直さねばならない。力の誇示は進化ではない。さぁ、答えを示せ。」


次々と試練が与えられる中、黒刃は真の意味で自分と向き合わざるを得なくなる。





最天使との対峙が続く異次元空間。黒刃は敵の圧倒的な力を前に動揺していた。次元そのものが歪むような場で、地平線が上下に揺れ、光と影が絶え間なく交錯する。


「進化とは、ただ強さを示すことではないと言ったはずだ。」

最天使の声が響く。その言葉は単なる威圧ではなく、黒刃の心を直撃する問いそのものだった。


「ならば問おう、人類に未来は必要か?未来を望むということは、過去を否定することではないのか?」


黒刃は影刀を構え直しながら答える。「過去を否定して進むことが進化だと言いたいのか?そんなもの、俺は認めない!」


最天使は静かに微笑む。「否定ではなく、受け入れだ。進化とは変わることであり、変わるためには自分自身を直視しなければならない。」


すると、空間が変化し始めた。突然、黒刃の目の前に現れたのは彼自身の過去の記憶――家族、友人、そしてかつての弱い自分。



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幼少期の黒刃は、周囲の誰とも心を通わせられない孤独な存在だった。彼の「影」は幼い頃から特殊な力を持っていたが、それは周囲に恐れられ、避けられる原因となった。


学校では「化け物」と呼ばれ、家でもその力を持て余した家族に距離を置かれる。そんな孤独の中で、黒刃が築いた唯一の信念は「自分だけは自分を裏切らない」というものだった。


しかしその信念は、ある日突然壊される。紅葉との出会いだった。


「なんでそんな顔してるの?」

初めて会った紅葉の問いに、黒刃は驚いた。誰もが避ける彼に対して、真っ直ぐな目で話しかけてくる彼女に、彼は戸惑いながらも心を開くきっかけを見出した。



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再び現実へ


記憶の中から引き戻されると、黒刃は最天使の目の前に立っていた。だがその目には迷いが浮かんでいる。

「お前が見せたのは、俺が逃げてきたものだ……俺は、それをどうしろと?」


最天使は淡々と答える。

「それを否定することも、肯定することも自由だ。だが、お前が未来を掴むには、その影を背負ったまま前に進む覚悟が必要だ。」


空間の中に黒刃の姿が複製される。もう一人の黒刃は幼少期の彼自身であり、その手には光の剣が握られていた。

「過去の自分を超えられるか?自分自身に打ち勝てなければ、人類を背負う資格などない。」


複製された黒刃が襲いかかる。攻撃の一撃一撃は黒刃自身が影刀で放つ攻撃の完全なコピーだった。


「なんだこれは……自身の技を、我が防ぐのか?」

徐々に追い詰められる黒刃。幼少期の自分の無邪気な笑顔とともに放たれる容赦のない一撃が、彼の防御を崩していく。



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一方、現実の世界で異次元空間をただ見ているしかなかった紅葉。目の前に広がる光景に怯えながらも、彼女は心の中で決意する。


「黒刃は絶対にこんなところで終わるような人じゃない……私がなんとかしなきゃ!」


紅葉は黒刃が異次元に入る直前に落とした影刀の一部を拾い上げ、それを抱きしめるように祈った。すると、彼女の心にかすかな声が響いた。


「影と光は、ひとつの輪にすぎない。」


その言葉を聞いた紅葉は意識を異次元空間に飛ばされ、黒刃の前に現れる。


「紅葉!?なんでお前がここに!」

紅葉は微笑む。「あんたを放っておくわけないでしょ。ほら、立ちなさいよ!」


彼女の言葉に力を得た黒刃は、自分自身を見つめ直す。そして、過去の自分を超える覚悟を決める。



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黒刃は紅葉と共に異次元の空間に立っていた。目の前には幼き頃の自分が、無邪気な笑顔を浮かべながら剣を振るっている。しかし、その一撃一撃には確かな力が込められ、黒刃を容赦なく追い詰めていた。


「影も光も、結局俺自身か……」

黒刃は震える手で影刀を握り直す。紅葉の励ましにも関わらず、彼の目にまだ迷いが残っていた。


「黒刃!」

紅葉が叫ぶ。「あんた、自分で自分に負ける気!?そんなの、私が許さない!」


その言葉に背中を押されるように、黒刃は目を見開いた。


「俺自身……」

黒刃は心の中で反芻する。そして彼は影刀を下ろし、複製された自分に向き合った。


「……お前は俺だ。俺の中にある過去だ。消すことも、忘れることもできない。でも、だからこそ……俺はお前を受け入れる!」


黒刃の言葉に応じるかのように、複製された自分が微笑み、ゆっくりと光の粒となって消えていく。その光は黒刃の胸の中へと吸い込まれ、影刀が一瞬だけ光に包まれる。そして、新たな姿へと変貌を遂げた。





黒刃が剣を握り直すと、空間全体が静寂に包まれる。最天使が再び現れると、彼はゆっくりと黒刃に歩み寄った。


「過去を受け入れることで、人は進化の一歩を踏み出す。だがそれが、未来への答えとは限らない。」


最天使は光と影をまとった羽を広げ、黒刃に最後の問いを投げかけた。

「人類が進化を選ぶべき理由は何だ?お前の言葉で答えよ。」


黒刃は一瞬目を閉じ、影刀を構えながら答える。

「進化する理由なんて、ただ生きるためだ。過去も未来もどうでもいい。ただ、俺は――俺たちは、この瞬間を生き抜くために進む!」


その瞬間、影刀から放たれる一閃が空間全体を貫いた。光と影が交錯し、最天使が作り上げた異次元空間が崩壊していく。


最天使は崩れゆく空間の中で静かに微笑んだ。「面白い……その選択こそ、真の進化の可能性かもしれない。」



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気がつくと、黒刃は元の世界に戻っていた。体はひどく疲れていたが、不思議と心は軽かった。隣には紅葉が座り込んでいる。


「紅葉……お前、無事か?」

黒刃が声をかけると、紅葉は不機嫌そうに睨みつけてきた。

「無事じゃないわよ!あんたのせいで変な異次元に巻き込まれて、なんかもう大変だったんだから!」


黒刃は肩をすくめて苦笑した。「……まぁ、助かったよ。ありがとな。」


紅葉はぷいっと顔を背けたが、次の瞬間、不意に笑みを浮かべて言った。

「でも、楽しかったわ。なんだか、あんたの変な夢に付き合ってるみたいでね。」


「夢?」

黒刃が問い返すと、紅葉はいたずらっぽく笑った。

「そうよ、きっとこれは全部、あんたの夢なのよ。どうせまた、またやってしまったようだ我ゆえに~とか言ってるんでしょ?」


黒刃は驚いて固まるが、紅葉の笑顔に少しだけ安堵した。

「……まぁ、夢ならそれでいいか。」


空を見上げると、そこには最天使の姿を彷彿とさせる一筋の光が流れていた。黒刃はそれを見つめながら、そっと呟く。

「でも……もし夢じゃないなら、人類の未来なんて、俺が勝手に守ってやるさ。」



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夜、紅葉は自分の部屋でベッドに横たわりながら微笑んでいた。

「黒刃、またなんか面白そうな夢を見てるみたいね……あなたは夢の中でも楽しそうなのね、あなたの生き方が私は羨ましいわ」


月明かりが彼女の部屋を優しく照らし、静かな夜が更けていく。物語は続く――。






夢オチです、、


夢ってわかるようにあんた呼びだったり、紅葉がめっちゃ強気だったり、俺と読んだりしてます。

バレてたかな、皆故に!では、、


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中二戦記、我ゆえに! ギガざむらい @gigazamrai005

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