天を統べ、竜を穿つ!我ゆえに!



ある夜、街の上空を巨大な影が覆った。現れたのは伝説のドラゴン「灼炎のルブルス」。その咆哮は街中に響きわたり、住民たちは次々と家に逃げ込む。


「街にドラゴンが現れたぞ!」

「逃げろ、火を吹くぞ!」


広場に駆けつけた黒刃は、その騒ぎに自信たっぷりに口元をほころばせた。


「ふっ…これは我が力を示す良い機会だ。またやってしまったようだ我ゆえに!」


すると、心配してついてきた紅葉が黒刃を止めようとする。


「本当にドラゴンなんて相手にできるの?」


黒刃はまるで聞いていないかのように胸を張り、ドラゴンに向かって歩き出す。


「貴様、伝説の灼炎のルブルスよ。我が前に跪くがいい…!!」


ドラゴンは彼の存在に気付き、怒ったように頭を持ち上げて彼を睨みつけた。黒刃は堂々とした態度を崩さず、片手を天に向かって高く掲げる。すると――。


天が味方する瞬間


「我が終焉の怒りをうけよ!我ゆえにな!」


偶然にも、真っ暗な夜空にひとつの稲妻が走った。次の瞬間、その稲妻が直撃するようにドラゴンの横に落ち、地面が火花で弾け飛ぶ。驚いたドラゴンは咆哮を上げ、そのまま怯えて大空に逃げ去っていった。


人々が息を呑んで見守る中、黒刃はあたかも自分の力が原因であったかのように、不敵な笑みを浮かべて立ち尽くしていた。


「ふむ…見たか、これが我の“終焉の雷撃”の力。さもありなん、またやってしまったようだ我ゆえに!」


騎士団も住民たちも、驚きと感嘆の声を上げ始める。


「影山黒刃様のおかげでドラゴンが退散したぞ!」

「なんて強力な力なんだ…あの雷は彼が呼び寄せたに違いない!」


黒刃はその称賛の声を受け、満足げに広場を去っていった。



---


紅葉の微笑み


黒刃が去ったあと、紅葉は騎士団の副隊長に小声で話しかけられた。


「いや…あの雷、本当に偶然落ちただけだろう?黒刃殿は何もしていないはずだが…」


紅葉は笑いを堪えながら頷いた。


「うん、でも、本人もみんなも信じてるし、まぁいいんじゃない?」


こうして、街では「影山黒刃が伝説のドラゴンを退けた」という新たな“伝説”が語り継がれることになった。本人も周囲もその“偉業”を信じて疑わないまま、彼の勘違いの英雄譚はさらに厚みを増していくのだった。


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