【満喫】美少女フィギュア:寿司・ピザ・ポテト

 たくさんの来店客がいる中で、施設が再構成されていった。

 まず、元から広い施設ではあったけれどそれがさらに広がった。一辺150平方メートルから、200平方メートルほどの面積に大拡張された。


 さらに巨大ポンちゃん像に明確な変化が起きた。ポンちゃん像がさらに巨大化した上に、背部に展望台が生えた。大小のたぬき像が追加され、ポンちゃんの頭や手足、屋上各所が子だぬきまみれになっていった。


<「 ポンちゃんの背中に乗れるもきゅかっ!? 」


「素晴らしい! 上層部を喜ばせるために動画を撮っておきましょう!」


<「 ポンちゃんが背中一番乗りもきゅーっ! 」


「待ちなさい、ポンデ・リン! 展望台一番乗りは、わたくしです!」


 たぬきとたぬき獣人は僕をおいて中に駆けていった。

 建設により来店客は一度排除されたようだ。おかげでちょうどすいているので、Lv2となった施設を視察した。


「ん、なんだこれ……?」


 入り口の方は何も陳列が変わっていなかった。そこで端の方に移動してみると、おかしなガチャを見つけた。


「香辛料、ガチャ……? こっちは、化学物質、ガチャ……? な、なんだこれぇっ!?」


 香辛料ガチャはその名の通り、カプセルの中に様々な香辛料が詰められたガチャだ。料金は300シルバー、結構する……。


 もう一方の化学物質ガチャは、シリコン、ポリエステル、プラスチック、グリセリン、合成ゴム、もろもろ。料金は100シルバー。意味がわからない……。


「おうっ、領主じゃねーか! ようがないならどいてくんなっ!」


「あ、鍛冶屋のおじさん……え、これ、回すの……?」


「合成ゴムが欲しいんだよ。さあどいたどいだっ!」


 さすがラクーン商会、単品で売らずに抱き合わせ販売で押し付けてゆくスタイルか……。

 この辺りは素材コーナーのようで、カカオやシナモン、白砂糖などを詰めたガチャまであった。


「パ、パンツ……?」


 ガチャコーナーを離れると、パンツを売る自動販売機があった。


「あらーんっ♪ こういうのに興味があるお年頃ぉー?」


「アマルガム、姐さん……?」


「いいわよ、いつでもいらっしゃいね♪ アタシの悩殺ポーズッ、ンフーン、見せてあげるわっ♪」


 かわいいフリルの付いたスケスケの勝負下着を、アマルガム姐さんがTバックをイメージしたポーズでご購入なされた。

 僕は何も見なかったことにしてその場を離れた。


 その他にも新たな自販機コーナーには、ジャム、チーズ、肉、陶器、超うさん臭いパワーストーン、オタク向けの大型フィギュアまで自動販売されている……。


「フ、どいてくれたまえ。おお、ベリルちゃんっ! 待っててね、今すぐ僕がこの資本主義の檻から出してあげるからねっ!」


 大型フィギュアの販売機では、黙っていればイケメンなお金持ち貴公子様が1万シルバーもの大金を自販機に投入して、大変お胸の大きなベリルちゃんとやらをご購入されていった。

 当然、スカートの中の確認は欠かせないようだった。


「君、見たね?」


「いえ見てません」


「フッ、遠慮しないで君も見たまえ。ほぉら、どうだい、このベリルちゃんの芸術性は!! 僕はね、これを当家の家宝にしようと思うんだ!!」


「そ、そうなんですか……」


 その貴公子様とは目を合わせてはいけないような気がした。


「あっ、ナターシャちゃんっ!? 不覚っ、ナターシャちゃんも本日販売だったのかっ!? いけない、今手持ちが……っ、くっ……」


 ラクーン商会って、やっぱり商売のやり方がえげつない……。

 隣の自販機ではお胸が小さい代わりに露出が多く、小柄でかわいい女の子が、ガラスごしの変態貴族の凝視という公開処刑を受けている。


「君、ザラキアの領主だね……? ねぇ、お金貸してくれない……? 僕、ナード・ヘンダーソン、ヘンダーソン公爵家の嫡子だよ! というわけで、ねぇっ、お金貸してよっ!?」


 なんと残念なイケメンだろう。

 女性向けファンタジーマンガから出てきたかのようなブロンドの美しい長髪、とがった顎、キリリとした目立ち。それが『金を貸せ、辺境泊!』と僕に手のひらを出す。


「あの、お兄さん? お兄さんは今、頭が衝動買いモードになってるから、ちょっと落ち着いた方がいいと思うけど……」


「わかってないな君は!? このままでは僕のナターシャちゃんが他の男に買われてしまうだろうっ! はっ、あれは、ATM!?」


「…………ふぅ、なんかよくわからないけど助かった。って、えっ、ATMっ!?」


 残念貴族がラクーン・ファイナンスのATMに家紋が刻まれた指輪を押し付けて、さもそれが当然のもののようにテンキーに数字を入力すると、スロットから大金貨が『ジャラッ』と現れた。

 これにより残念貴族は無事、ナターシャちゃんのお迎えに成功したのだった。


「いやあ、便利だなあ、ATMって!」


「え、うん……そ、そうですね……?」


 ファンタジー世界の人たちがATMを使って、エッチなフィギュアを買いまくる光景はシュールというか、もはや冒涜的な何かだった。

 というかラクーン・ファイナンスのあの暴利で借りて、大丈夫……?


<「 ご主人様っ、きてきてっ、とんでもないの見つけたもきゅ! 」


「あ、ポンちゃん! 何を見つけたの?」


 ポンちゃんが戻ってきたので貴公子様を捨てて後を追いかけた。

 すると僕の視界に超特大のガシャポン・ポンが現れることになった。


<「 これもきゅ! 」


「え……ええええーー…………」


<「 これこそがラクーン商会、驚異の流通力もきゅっ! 」


 超巨大ガシャポン・ポンの中に乳牛がいた。マグロがいた。山羊の群れと、羊の群れがいた。そして極め付きに、シュモクの付くサメがいた……。


 お値段は20万シルバー。頭おかしいんじゃないですか、このガチャ企画した人? もしかして薬キメてる? てか、人じゃなくて、たぬき……?


「売れるの、これ……?」


<「 牛さんが当たれば大儲けもきゅ! 」


「サメとマグロが出たら?」


<「 マグロが出たら食べるもきゅ! サメが出たら食べられるもきゅ! 」


 すごいね、ラクーン商会……。

 うん、それ以外の感想はないかな。


 僕とポンちゃんはその後、新たに追加された自販機飯コーナーで、牛丼、チャーハン、オムレツ、フライドポテト、チキン、ピザ、寿司がボタンを押すだけで食べられる夢のワンダーランドに興奮しつつ、今日のところは寿司とピザとポテトを嗜むことにしたのだった。


<「 もきゅぅーっ、ポンちゃんお寿司のために生きてるもきゅ! 」


「たぬきがパック寿司……うん、シュールだ……」


 イカとタコが苦手なポンちゃんと、卵とカニを交換した。


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【内政:辺境伯領ザラキア】

 【人口】 898  (+103)

     (ドロイド人口 +55)

 【治安】100/100(+ 5)

 【民忠】108/100(+ 8)

 【兵力】  10

 【馬】    0

 【魔導師】  0

 【魔導兵】  0

 【求職者】 65

 【施設数】7/7

 【補足】()は先月比


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【備蓄:辺境伯領ザラキア】

 【兵糧】2131   (+ 1164)

 【金】    6   (+ 1000)

          返済(ー  700)

          (残り   8ヶ月)

 【木材】144 【石材】52 【人材】2

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