【建設】防衛施設:高杉
ロゼッティアとの同居生活は深刻な症状を引き起こす劇薬だった。
第一に、彼女は積極的な年上の女性だ。働き者で、体力もあって、夜になるとさらにすごい、凄まじい。婚約関係にある僕が彼女を拒めるはずがなかった。
第二に、対面の問題がある。僕は怠け者で、ロゼッティアは働き者。彼女は暇をするとすぐに家事をしたがり、やることがなくなると自分の工房に出かけてゆく。
そんな彼女の前を離れ、ポンちゃんをお腹に乗せてベッドでゴロゴロ自堕落に生活していたら、同居人の対面が保たれない。今はいいけど、いずれはまともに働こうともしないダメ亭主扱いされることになる。
だからここ一ヶ月、午後からは働かない主義の僕は志を曲げて、視察という名目で領地を巡り『やあ、困っていることはないかな?』と、まともな領主みたいにご用聞きをして回った。
本当はもっとダラダラとだらしなく自堕落に生きたいのに。殊勝にも収穫を手伝ってみたり、モールのフードコートに逃げてダラダラと過ごしたりしていた。
3月1日、初春――
「ご領主様、本日で3月1日。春にございます。領地の状態・予算の方はいかがでございましょう」
そう、あれから一ヶ月が経った。毎月1日の頭は新しい建設を検討するターンだった。
「ノワールさんがそんなこと聞いてくるなんて珍しいね。ちょっと待って、これが終わったら画面を出すよ」
「それは?」
「パラパラマンガ」
仕事をしている振りをするのも大変だ。僕は書類の端に、胞子からキノコが大きく成長する壮大なパラパラマンガをノワールさんに見せてあげた。
「よろしいのですか? 外向けの書類のようですが……?」
「あ…………まあいいや」
書斎机を立ち、ノワールさんの隣に回り込んで銀の目を使った。
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【内政:辺境伯領ザラキア】
【人口】 795 (+85)
(ドロイド人口 +45)
【治安】 95/100(+ 5)
【民忠】100/100(+ 8)
【兵力】 10
【馬】 0
【魔導師】 0
【魔導兵】 0
【求職者】 41
【施設数】6/7
【補足】()は先月比
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【備蓄:辺境伯領ザラキア】
【兵糧】1600 (+ 920)
【金】 626 (+ 695)
返済(ー 450)
(残り 9ヶ月)
【木材】127 【石材】87 【人材】3
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「いつ拝見しても素晴らしいお力です。来月もまた、1割以上の人口増加が望めるようですね」
「うん、このペースで増えたら将来は大都市も夢じゃないよ」
今月の成長で重要なのはこれ、【【施設数】6/7】だ。
人口か、施設アップグレード回数か、どちらがトリガーとなったかはわからないけど、とにかく今月から施設を1つ増やせるようになっていた。
「ご領主様、この話はご不快に思われるかもしれませんが……」
「ん、何? ノワールさんのおかげで治安も上昇しているし、遠慮しないで言ってよ」
「私はミュラー様とリアーナ様の、友人にございます」
そんな設定は原作にはなかった。原作で語られなかったのか、あるいは兄上の努力のたまものか、とにかく今は友人関係らしい。
「2人はザラキアの防衛体制を不安視しておりました。そろそろ、そのお力を軍備に回されてはどうでしょう」
来月に建設したい内政施設があった。
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【錬金術工房】
Lv1【費用 金1000 人材1 鉄材50 石材50】
【効果:金・兵糧収入+25%】
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それはこれ、錬金術工房。見ての通り、収入に乗算でブーストがかかる強力な施設だ。
単純に錬金術師の仕事を隣で見物したい心境もあった。
「ノワールさんがわざわざ言ってくるってことは、今は防衛を優先した方がいいってことだよね」
「国境荒らしは減りましたが、どうにもそこが不穏にございます」
「わかった。次の投資は軍備にしてみよう。防衛施設のメニューを出すね」
戦国の野望シリーズでも、内政に傾倒しすぎると侵略されるのがお約束。そろそろ安心がほしいところだろうか。
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【防衛施設】
【関】
Lv1【費用 金800 石材250】
【効果:耐久2000/2000】
【御殿】
Lv1【費用 金500
木材25 石材25】
【効果:耐久800/800】
【都市外壁】
Lv1【費用 金200 石材1000】
【効果:耐久1200/1200】
【魔法結界】
Lv1【費用 金2000】
【効果:防衛施設耐久+1000】
【堀】
Lv1【費用 金1000 石材500】
【効果:防衛施設耐久+500
城壁強化・小】
【落とし穴】
Lv1【費用 金500 木材200】
【効果:落とし穴発動】
【スライム罠】
Lv1【費用 兵糧5000】
【効果:スライム罠発動】
【バリスタ】
Lv1【費用 金500 鉄材1000】
【効果:都市攻撃力+500】
【魔法銃眼】
Lv1【費用 金2000】
【効果:都市攻撃力+250
魔導師が銃眼より攻撃可能】
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ぶっちゃけ、コスト高過ぎ。僕が金・金・金を追求していたのは、金と資源がなければ領地防衛もままならないこの現実からだった。
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