【内政】建設:畑

「さて、今なら特別料金300シルバーで、屋敷の掃除をさせていただきますが、どういたしましょうか?」


 見送りを済ませて書斎に戻ると、荒れ果てた屋敷を見るに見かねてか、ノワールさんがそんな提案をしてくれた。

 300シルバーで大掃除をしてもらえるなら安いものだけど、今は予算に限りがある。


「大丈夫、ここの掃除は自分でやるよ。それより見てほしいものがある」


 そう言って僕は書斎机のザラキアの地図に手を差し出して、あの力を使った。


――――――――――――――――――

【内政:辺境伯領ザラキア】

 【兵糧】2014   (+53)

 【金】  853   (+28)

 【人口】 507   (ー 1)

 【治安】 70/100(+ 0)

 【民忠】 52/100(+ 0)

 【兵力】  10

 【馬】    0

 【魔導師】  0

 【魔導兵】  0

 【求職者】 10

 【施設数】0/6

 【補足】

  金・兵糧の()は来月予測

  その他の()は先月比

――――――――――――――――――


 雇い主の目が『ギラーンッ』と光っておかしな映像が現れると、さすがのクールビューティも驚いたようだった。


「これがアルト様の……。ミュラー様に聞かされたときは半信半疑でしたが、なるほど、これは恐ろしい……」


 傭兵からすればそうだろう。

 この力を使われたら、ものの一瞬で戦力を把握されてしまうのだから。


「やっぱり聞かされてたんだね」


「そもそもこの仕事、ミュラー将軍からの依頼でなければ受けておりません」


「じゃあ、この画面についても聞いているよね」


 内心ワクワクとしながら、画面左の【建設】コマンドを押した。


――――――――――――――――――――――――――――

【内政施設】


 【畑】

  Lv1【費用 金200】

     【効果:兵糧200(月)】

 【商店街】

  Lv1【費用 金400】

     【効果:金50(月)】

 【兵舎】

  Lv1【費用 金200 石材50】

     【効果:正規兵上限250

          治安低下抑制・小】

 【歓楽街】

  Lv1【費用 金800】

     【効果:人材5(月)

           民忠誠増加・小】

 【職人街】

  Lv1【費用 金200 人材5】

     【効果:金100(月)】

 【錬金術工房】

  Lv1【費用 金1000

      人材1 鉄材50 石材50】

     【効果:金・兵糧収入+25%】

 【ワイン工房】

  Lv1【費用 金200 木材200 人材3】

     【効果:金20(月)

       特産品ワイン50追加】

 【馬産地】

  Lv1【費用 金700】【効果:馬50(月)】

 【ドロイド試作所】

  Lv1【費用 金50 人材1】

     【効果:効果:ドロイド人口10(月)】

 【魔導工房】

  Lv1【費用 金2000

      木材・鉄材・石材2000 人材3】

     【効果:魔導兵50(月)】

――――――――――――――――――――――――――――


 おお、なんか想像よりも――ファンタジックだ!

 特にこの【ドロイド試作所】というのが気になる!

 表示によると金は853ある。


「まずは【畑】と【商店街】の建設かな。これで金600の消費。残金の253は使わずに残しておいた方が現実的だろうね」


「は、はぁ……?」


「仕組みがわからない人間には、まあわからないよね、これだけじゃ」


 検証のためにバックからお金を取り出した。そこには兄上が今日のために工面してくれた金貨袋が入っている。その金貨を10枚ずつそろえて机に並べた。

 小金貨が80枚、しめて80万シルバーだ。


「まず、【畑】を建設するよ」


――――――――――――――――――――――――――――

 領主:アルト(100/100) に費用・金200で命令を実行させますか?

 →【是】・【否】

――――――――――――――――――――――――――――


 日本円にして200万シルバーの投資だ。とても安いとは言えない。

 指を振るわせながら僕は【是】を押した。


―――――――――――――――――――――

 建設予定地を指さして下さい。

 (現在光っている大地が建設予定地です。

―――――――――――――――――――――


 え、これってどういうこと……?

 指を指せといわれても、画面に変化がない。


「な……っ!? ご領主様っ、外をご覧下さいっ!」


「え、外……? えっ、ええええーっっ!?」


 書斎の窓から外を確かめると、ザラキアの大地が光っていた!

 川の方に3つ、街道沿いに5つ。それぞれの建設候補地が正方形に光を上げて輝いていた!


 しかもでかい……。

 一辺250メートルはあるように見える……。


「じゃ、じゃあ、いくよ、見ててね……」


「り、理解が追い付かない……」


 川沿いの土地の一番遠いところを指さした。


――――――――――――――――――――――――――――――――

 家事手伝い:アルト(100/100)は【畑】の建築を進めた!

 成功! 【畑】の建設度が100%となり【畑】が完成した!

 土地整備により木材31を獲得! 石材9を獲得!

 【特性:開墾】により、金の消費が100軽減された!

――――――――――――――――――――――――――――――――


 かつてうちの花壇で起きた現象と同じことが起きた。

 管理を放棄され荒れ果てた土地が光輝き、群生していた草木が消滅した。


 そしてそこに麦畑が生えた。

 ぐんぐんと光輝きながら背を伸ばし、青から黄金のグラデーションを描く美しい麦畑が誕生した。


「私は、夢でも見ているのか……?」


「現実だよ。だってほら……小金貨が10枚消えている」


 【特性:開墾】によるコスト半減効果を忘れていた僕は今、ちょっとした棚からぼた餅の気分だった。

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