第3話 見逃していた景色との出会い
スマホを持たずに歩いていると、ふとした瞬間に周りの景色が目に入ってくるようになりました。普段なら、ちょっと立ち止まった時や信号待ちの時など、無意識にスマホを取り出してしまうのですが、その動作がないことで自然と視線が周囲に向かうのです。
道端に咲いている小さな花に気づいたり、歩道の端に生えている雑草が意外にも力強く青々としていたり、風に揺れる木の葉が美しく光を反射していたり。何でもない風景に、こんなにも豊かな表情があるのだと初めて気づきました。スマホに視線を奪われていた分、こうした小さな発見を見過ごしていたのだと思うと、少しもったいなかったなという気持ちさえ湧いてきました。
また、遠くの空を見上げると、雲がゆっくりと流れていくのが見えました。雲の形が少しずつ変わっていく様子を眺めていると、不思議と心が穏やかになっていきます。いつもなら「今日の天気はどうだろう?」とスマホの天気アプリを開いていたところを、今日は空そのものを見て「今日は曇り空だな」と感じるだけで十分でした。自分の目で直接自然の様子を感じることで、情報以上の何かが心に染み込んでくる感覚がありました。
さらに耳を澄ませば、風の音や鳥のさえずり、遠くで走る車の音が微かに聞こえてきます。スマホがないと自然に五感が研ぎ澄まされ、周囲の小さな変化や音に敏感になることに驚きました。普段の散歩なら、足早に通り過ぎてしまう場所で、今日は立ち止まり、少しの間じっくりと周りを眺めてみる余裕ができました。
こうして、スマホがないことで「何かを見逃すのではないか」という不安が消え、むしろスマホに邪魔されず、今この瞬間にあるものを見つめることの楽しさに気づいたのです。スマホに触れることなく歩いたことで、日常の中にある美しい瞬間や、新たな発見が広がっていることに感謝さえ覚えるひとときでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます