物語の終わり、別名、エピローグ
「あー、やっとひと段落着いたな」
軍の連中を追い返し、アイナの家を片付け終わったのち、ディータは伸びをした。
「ご迷惑をいっぱいかけました」
とアイナは、
「いや、それなりに楽しかったし、資料も見せてもらえたからいいさ」
とディータが笑って答えた。
アイナとノーラの錬金術に関する資料や構築手順の考えをまとめたノートを見せてもらったディータは、ここに来た目的を果たした。
「…また軍に狙われるんじゃないの?」
アルノーの問いに、アイナは、そうですねぇと、笑った。
「でも私たちは、ここで過ごします。私たちは、専門バカで錬金術師以外にはなれないんですよ。
他のところでは見世物となるか、ペテン師って呼ばれるかくらいだって聞きました…だから、私たちはここ以外には住めないですよね。
ここは、私たちみたいな錬金術師が住む町ですから」
また、軍の人間が来ても、どうにかして逃げますよ、とエリサが笑った。
「それにしても、関所破りだったのね…」
ノーラが兄弟たちを見て言うと、二人は困ったように眉を下げた。
「関所を破ったつもりはないんだよなあ」
「山を歩いていて、見た事のない植物があったから道から外れて行って、下り切ったら国をまたいでいたらしい」
警備が緩いだけだよなあ、と兄弟はこともなげに言っている。
「いや、あの、それ、普通にやっちゃダメな事よね」
ノーラの言葉に二人は、まあなあ、とうなずいている。
「あ、そうだ。ノーラ。私たちの特殊軍人証明に、ディータさんたちの国との行き来に関する通行記載がありましたよね」
「あー、緊急事態に限り、関所での手続き不要で行き来できる、っていうような内容のあれ?」
「はい、今回、エリサが意識不明に陥っていて、この町の中だけでは理由がわからなかったから、隣国の医師を紹介してもらった、という事で通用しませんかね。
エリサに変な薬処方したお医者さんにも協力願って一筆書いてもらいましょう」
「じゃあ、その旨を書きましょうか…えーと、書式ってどうすればいいの?」
「適当でいいんじゃないんですか?」
適当って……。
「いやあ、初めて私たちが元軍人として役に立った感じですね!」
晴れやかにいうアイナを見て、まあ適当でもいいのかもしれない、と兄弟たちは思った。
とりあえずのところ、ディータは目的を果たし、アルノーは兄を諫めつつも協力し。
この町に住んでいる錬金術師たちは、そこそこ穏やかな日々を取り戻した。
そんなところでお話は終わりになるのが良いと思われる。
そのアイナたちの特殊軍人証明による関所の行き来云々は、昨年に廃止されており、結局、帰りの際にディータたちは罪に問われかけ、少し面倒な手続きを踏む羽目になったというのは、また別のお話……。
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