第7話 求む!協力!!
朝に普通に目を覚ましたディータは家主であるノーラの姿がない事に気が付いた。
「あの本のムシさんなら、まだ寝てるよ」
アルノーが兄の視線に気が付いて説明した。
……本のムシとは、ノーラのことか、言い得て妙だ、と感心しながらうなずいた。
「夕べ遅くまで起きてたみたいだね」
「そうか…、そういえば昨日、台所は好きに使っていいと言われたが…」
後ろを振り向いた、その台所……果たして、それは台所…なのだろうか…その周囲にも本が積み上がってはいる上に、試験管やビーカーなどが、たくさん並べられている。台所というよりは実験室の一角である。
「錬金術は台所から発達した、とも言われてるからなあ」
と、ディータは苦笑しながら言った。
「ま、大丈夫だろ」
兄の言葉にアルノーは本当に?という目線をしていた。
「おはようございます…すみません、寝坊しました…食料足りていますか?」
しばらくしてノーラが部屋から出てきた。
「あぁ、足りてる。悪いな。勝手に使って」
「いえ、むしろ台所が本来の使い方をされているので、良い事かと」
あ、やっぱり実験に使ってたんだ、とアルノーは少し遠い目をしている。
「合成獣のノーラ、おはようございます。私です。アイナです」
ノックと共に声が聞こえた。
ドアを開けると、アイナは何かの制服を着用していた。
「あの旅人さんたち用のができました。
特殊コーティング・パワーアップ・ヴァージョンのやつで、しかも、今までで一番の小型化で可愛らしい姿に成功です
エリサは疲れて一旦休憩していますが、これで私の練成してしまったマイナス感情ともおさらばを…」
「アイナ、何、軍服なんか着てるのよ!!」
ノーラの声に、アイナは、そうですねぇ…、と笑った。
「ああ!もう!!アイナ、何を考えてるの!?」
「…ほとんど何も考えておりませんねえ…
私は、夜0時半を過ぎたら意識の存在がないんですよ…つまり、普段はその時間には寝ているんです。
夕べは、ほとんど徹夜だったから…ただでさえ鈍い、頭の回転が3分の1なんですよ」
ふざけているのか、本気なのか、わかりかねるアイナの言葉にノーラは、肩を落とした。
「ああ、悪かったわ…埒の明かない会話を延々と明け方まで繰り返したんだから…でもね!」
そう言いかけると、アイナは気の抜けた笑顔のままディータとアルノーへ視線を移した。
「それで、お二人とも、お手数ですが、力を貸していただけますか?」
と言った。
「はい?」
ノーラが、かみ合わない話に目を丸くすると、アイナは兄弟たちに向かって頭を下げた。
「私はここから離れたくないんですよ。軍部など2度と所属したくないし」
眠そうなアイナの目が、一瞬だけ、本気になる…が、それは、眠さをこらえた所為であることを、ノーラは知っている…
「では、彼らが来るまでまだ時間はあるので、少し作戦を立てましょうか」
アイナは制服の襟を正し、その手のひらサイズの小さな紙人形を兄弟たちへと差し出した。
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