第25話
美冬ちゃんが必死に真田様にお手紙を書いている頃。
あたしは、ご飯を炊いていました。
美味しく、美味しく炊けますように。
そう願いながら。
「何合炊く気だ、このバカ娘っ」
「はっ、母上っっ」
物凄い形相の母上が参りました!!
まるで鬼……
「母親に鬼だってぇっ!?」
「あいたぁっ!?」
ベチーンッ!!
頭を叩かれました。
痛し……。
「おにぎりを作る?」
「へい。明日の朝、おにぎりを作るべくご飯を炊いておりました」
「ふーん。昼ご飯に?」
「えっと……。あの……。朝ごはんと申しましょうか……その」
「男か」
ニターッと笑う母上。
「男!?」
成実様をそんな言い方っ。
「アンタが作るの?」
「もちろんです!!」
成実様のお口に入るものは私がっ。
「そ。頑張って」
「はい!!」
母上!!
激励に頷く……も。
「くれぐれも」
「ふぇい?」
「砂糖と塩を間違えないようにね」
「……はっ!!」
何回かやらかした失敗を注意された。
そうだった!!
成実様に食べてもらうのに失敗は許されません!!
「ご教授ありがとうございます、母上」
「健闘を祈る」
手を振って去っていく母上に私は深く頭を下げた。
危なかった。
これを差し入れたら、成実様は食べて下さるでしょうか?
……あたしを思い出してくれないでしょうか。
「美味しくなーれ」
「出来た!!」
朝、5時過ぎ。
私は綺麗に出来たおにぎりを8つ、弁当に詰め、水筒と一緒にリュックサックに入れる。
そして、美冬ちゃんから預かったお手紙も入れる。
忘れないように猿飛に渡さないとね。
よしっ。
準備万端、私は静かに家を出て、ランニングを開始した。
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