第21話

ふっ。



しかし今の私は無敵ですよ!



だってまた明日も歩様に会えるんですよ!?



しかも歩様からまた明日って!



よしっ!!



私は鞄を掴み




「あ?帰んのか、桜」



「しっ!こじゅ様!私は歩様を後ろから追います!」



「ハァ?」



「あんたまさか……」



「じゃっ!!」



「じゃっ!!じゃないわよ、このバカッ。咲っ」



「おう」




むんずっと、こじゅ様に首根っこを掴まれた。




「離っ、離してください、こじゅ様っ」




歩様が行ってしまうーっ。




「後をつけるなんて、犯罪紛いのことは許しません」



「違っ、守るためにっ」




もう2度と喪わないためにっ。




「桜」



「っっ」



美冬ちゃんが真剣な表情で、声で私を呼ぶ。



平伏したくなるそのオーラは前世から変わらない。



確かにこの御方は"あの"伊達政宗様だ。



いつの間にか私の首根っこを掴んだままのこじゅ様も直立不動になっていた。




「大好きな人に会えて嬉しいのはわかる。でも今のアンタの行動は異常。しっかりしなさい。クラスメイトに後をつけられる。それがどれ程の恐怖か」



うっ。




「最後には逃げられるわよ?」



「っっ」




嫌だ、嫌だ、嫌だ!!



せっかく会えたのにっ。


漸く会えたのにっ。



嫌われるなんてっっ。


逃げられるなんてっ。





キッパリと、ドキッパリと言われた言葉にショックを受ける。



でも、本当だ……。



嬉しくて、離れがたくて、私がしようとしたことは現代では"ストーカー"と呼ばれるもの。




「"ああ"なりたいの?」



「?」




と美冬ちゃんが指差したのは……



貞…………濃姫だった。



ベターッと壁にカエルのように張り付いて、見ている先は……



言わずがもな、織田信長公であった。



その織田信長公は顔色が悪く表情も優れない。



うんうん。



あんな体勢で……あんなに穴が開きそうなほど見つめられたら、そんな表情にもなるよね。




うんうんうん。



私達は何度も頷き、信長公に同情した。



私も"アレ"になるとこだったんですね……。




「美冬ちゃん」



「ん?」



「ありがとう。ハッキリ言ってくれて」



「うん。分かれば良いの」




と笑った美冬ちゃんはとても可愛くて、教室に残ってる男子達の視線を独り占めにしました。

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