休日のお買い物③

次の立ち寄るのは、二階にある雑貨屋にした。

「ここは何があるんだい?」

あちこち入りたい放題だろうに、ここにくるのは初めてなのか、楽しそうにしてくれる。

それだけで、来て良かったと思った。

「カーテンつけてあげようと思って。」

部屋に落ちていたハンカチで覆いを作ってあげたけれど、ちゃんとしたのをつけてあげようと思ったのだ。

「なるほど、君も慎みってのを学んでくれたのか。」

不埒なことなんて考えてはいなくても一応は男なのだとか、今からきちんとしておかなければならないよとか、なりは小さくても彼は兄か父親のようだ。

「まったくもう。君は油断し過ぎのところが心配だから、いろいろと教えておいてあげないといけないね。」

小さいだけではなくて、自分よりはだいぶ年下のはずだ。それなのに面倒を見る気なのか、偉そうにもやれやれと肩をすくめてみせる。

そんな仕草を見せられても、ただ可愛いので、まったくいらだちもしなかった。しかしそれも見抜かれていたのだろう。

「ちゃんとわかっているのかい?

君の心配をしているんだよ!」


自分がほしかった見た目重視の文房具をいくつかと、彼の選んだカーテンがわりのシックな色味のバンダナを買う。

部屋が暗くなるから照明がほしいというので、100円均一に戻って電池式のキャンドルライトを買った。

そのあたりで、そろそろ休憩にしようとどちらからともなく提案した。


荷物はそれほどかさばらないけれど、トートバッグ半分くらいは埋まっている。帰りに食料品を買いたいので、あまり余裕はなさそうだ。

ドーナツ屋ではイートインを選び、人目につかないカウンターの端を陣取る。カウンター上にカバンを乗せて、その奥に妖精を座らせた。

飲み物の他には、いくつか小さい丸いドーナツの入ったカップと、もうひとつ普通の穴の空いたドーナツを買う。もちろんピックは二本もらっておいた。

「ドーナツというやつか。よし、討伐してくれよう!」

「どこでそんな言葉を覚えたの?」

「この間、学校に忍び込んだ時だよ。こどもが言っていたけど、こういう時に使うんじゃないのかい?」

多分違うと思ったけれど、可愛いので誤解は放置して、そうかもね、と返しておく。

さっき買ったミルクピッチャーをおしぼりで拭いて、自分のグラスから分ける。

持ち上げられることは確認していたけれど、中身が入るとかなり重そうだし、ふちが厚い。スプーンなどで掬うならいいけれど、できれば陶器ではない方がいいのかもしれない。

使い捨てのスプーンも一本出して、これもおしぼりで拭いてあげた。

「なかなか人間らしい食事になった!」

一個しか食べられないのだから、好きなの選ばせると、こちらのドーナツが終わるくらいまで悩んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る