休日のお買い物②
目的地は定期圏内にある商業施設で、地方都市にふさわしく、周囲には住宅地といくつかの飲食店がある程度の郊外に建っている。三階までしかないけれど、敷地面積は広い。低いのは屋上に駐車場がある都合だろうか。
二十分ほどバスに揺られ、何事もなく到着した。妖精がうるさく喋るかと思いきや、窓に張り付いて景色に夢中になっていてくれた。
最初に向かったのは、その一階にある、百円均一だった。
まずは消耗品をいくつか買い足そうと、キッチン用品のコーナーに向かう。
そこで手に取った食器洗い用スポンジに、彼は興奮したように声を上げた。
肩から飛び降りると、商品棚の上に乗り、目を覗き込んできた。
「これにしよう!素敵なマットレスだ!」
ミニサイズに交換しようと思っていたのに、そのスポンジをいたくお気に召したようで、両手で掴んで離さない。
「これにする!これがいい!これを買って!」
赤、緑、青のネットに入ったよくあるスポンジだ。毎月交換できる安さが魅力で、性能面や見た目はあまり良くないだろう。
「本当にこれがほしいの?」
ミニサイズにしようとは思ったけれど、大きい方でも使えないわけではない。三個ともほしいわけではないだろうから、これを買っても構わないだろう。でも、本当にこれに寝るつもりだろうか。
「本来の用途なんてどうでもいいと思わないかい?こんなに素晴らしいマットレスなんだから。」
彼と見比べれば、スポンジのほうが短い。足が少しはみ出してしまうかもしれないと言ってみたが、三個あるなら半分をおくれと言うので、何がしたいかわかった。
しばらく悩んだけれど、否定したところでちょうどいいベッドを作ってあげることはできないし、ここにそれより大きいスポンジもないようだ。
そこでようやく、これまでカラーボックスの棚板の上でタオルハンカチにくるまって寝ていたことを思い出した。
あれに比べれば寝心地がいいのは間違いない。ソファに使えるかもしれないと思って、ミニサイズも一緒にカゴに入れた。
インテリア用や写真用の小さな椅子やテーブルはジャストサイズとはいえないけれど、間に合わせには十分だろうか。もちろん耐久性は皆無だと言い聞かせた。あれもこれもほしいと言うので、先に数の制限をかけておく。
家具は五個まで、食器は必要なだけ選んでいいことにした。
取手付きのミルクピッチャーはマグカップかスープマグくらいのサイズ感で、食事に良さそうだ。
「くろもじ?」
彼が欲しがったカトラリーは、予想外のものだった。
「素敵なナイフだろう。これならホットケーキを切れるんじゃないだろうか?」
和菓子用の楊枝、ではあるけれど、練り切りや饅頭だけでなく、あれなら結構固い羊羹も切れる。基本は使い捨てだろうけれど、客用でないなら何回か洗って使ってもいいだろう。
「フォークの代わりは、フルーツ用のピックならどうにかなるかな。」
「いいね、ナイフとフォークがあれば、何でも食べられるだろう。」
スプーンはコンビニでプリンを買った時にもらえるような、使い捨てのプラスチック製を選んだ。
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