最近の人間ってのは

ショックからようやく立ち直ったのは、鍵のかかる音がしたからだった。


置いて行かれた。

その衝撃ったらない。

だって、妖精を見たのに。

置いて行かれた。

朝ごはんだって出してくれなかった。

まったく、最近の人間ってのは!


昨夜は彼女一人、寿司を食べていた気がする。ここにくる前にそこらの果樹から適当にむしってきたし、夜も遅かったから気にしなかったけれども、「一緒に食べる?」の一言もなかった。

でもまあ、昨日のことは水に長そう。

でも今日はそうはいかない。


まず、なんてったって、朝の態度がよろしくない。

同居妖精に与えたプライベートな空間だというのに、顔を近づけて覗き込むなんて言語道断だ。破廉恥だ。はしたない。最近の人間ってのは!


それから、朝ごはんのお誘いは向こうからするべきだろう。

妖精に対する態度がなってない。

苛立ちが収まると、この家の食料事情も心配になってきた。

なんとなくだが、まともなものを食べていないような気がした。


彼はこれから躾けなければならない同居人間のことを考えて、げんなりする。

とりあえず、用意してくれたものでも食べようか。

テーブルの上には広告や封筒が崩れるほどに積んである。その上に乗っかって、皿の中の乾いたバウムクーヘンを外から一枚引き剥がした。顔より大きいのだからそのままは抱えられない。

「ん。思ったよりいけるな、これ。」

上機嫌に羽を振るわせながら、結局はもらったものは美味しくいただくことにした。


妖精は、もらった分だけしか与えられない。

こんなもので満足するわけはないのだから、まったく、最近の人間ってのは、まったくわかっていないのだ。

「帰ったら覚えてろよ。」

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