第33話

咲side



いつからかそこに居たんだ。



成実の側に。




「拾った」




笑って言う成実。



ペコリと無表情で頭を下げる女。


ーーーーー桜ーーーーー



いつも成実の三歩後ろを歩いてた。



それはそれは嬉しそうに微笑んで。



でも成実が振り返ると無表情に戻るのだ。



俺だけが知ってるその微笑み。



いつからだろうか。



それを・・・その笑顔を俺にだけ見せてほしいと思うようになったのは・・・。




『小十郎。ぶふっっ‼』



『なんですか、政宗様』




ニッタァーっと笑った政宗様に肩を叩かれた。



この方は昔からの観察眼が凄い。




『しかしアレは鈍いみたいだから、きちんと気持ちは伝えた方がいいと思うぞ』



『・・・いえ。この想いは消します』




桜の幸せが一番だ。


成実の側に居ることが桜の幸せならこの想いは・・・




けれど・・・・




『桜ーーーーー‼‼』




成実を守り桜は死んだ。



その死に顔は安らかといえた・・・が、死なせるために諦めたわけではない‼



こんなことならーーーーー。




「こじゅ様!」




ずっと引きずってきた想いに奇跡が起こった。



いや、奇跡ではないか・・・・。



桜が記憶を持って生まれたことは。



忘れてくれたら良かったのだ。



でも・・・一番近い存在として居れることは嬉しい。



名を呼んでくれるのが嬉しい。




これは今世で、この恋を叶えろということなんだな!



良いだろう!



しかし幼馴染みとして大切に、大切にしてきたら・・・・・・・・来るべき時が来てしまった。




「成実様にお会いしましたーーーーー‼」




あの笑顔で、久しく見てなかったあの笑顔で桜はそう言ったんだ。



成実。



もう遠慮はしない。


お前には絶対に渡さない。


桜は俺が幸せ・・・ってっっ‼



アイツはなんでスカートで立ちこぎなんかしてんだーーーーーっ‼‼



白い太ももが全開に。


パンツがもう少しで見えそうに‼



道行く男達がニヤニヤしながらそれを見てる。



見てんじゃねぇよ‼‼




アレは俺のだーーーーー。




「こんのバカ忍ーーーーー‼」




お馬鹿で鈍感な愛しい幼馴染みに追い付くべく俺はスピードを上げた。

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