第26話

「ぬぐぉぉぉ・・・‼真田の領地がっ、真田の領地がぁぁっっ‼」




大量の鼻血を噴きながら地面を悔しそうに叩く猿飛。




昔は強かったんだけど・・・。





『落ち着け。毎度毎度言うが領地を奪いに来たわけじゃない』




昔の喋り方に戻る。



しかし、買い物に来た時など私が真田領に入るたびに猿飛はいつも襲ってくる。



これが私が外で手裏剣を使う理由でもあるんだけど・・・。



その度に返り討ちにしては、こうやって叫ばれる。


昔ならまだしも、領地なんて今はいらない。




「そか。んじゃ何しに来た?」




軽い。

そして立ち直りが早い。



まぁこれもいつものことだけど。




聞かれて言葉を詰まらせる。



言いたくないなぁ・・・。


言いたくないけど、コイツ言うまで退かないしなぁ。




『迷った』



「は?」



『ランニングしてたら訳あって迷った』



「ダッセェ‼」



『あんたにだけは言われたくないわっっ』




吠える。



猿飛の前ではどうも・・・昔が・・・。




ニタニタ笑う猿飛にもう一度顔面パンチを繰り出そうと拳を上げるも・・・。




成実様っっ‼




そうだ‼


成実様をお待たせしてるんだった‼




「じゃね、猿飛」



「あ?もう行くのか?」



「人を待たせてるの」



「おーおー。さっさと行け伊達の忍」





拗ねたようにそっぽを向く猿飛。



可愛い奴なのです。




「猿飛。真田様はお元気?」




ふと、真田様の顔が浮かんで聞いてみる。



すると猿飛が目を輝かせて頷いた。




「元気だ‼そういえば、伊達政宗に会いたいと言っておられた‼」



「そ。良かった。伝えとくよ」



「頼む。じゃーな。もう迷子になるなよ」



「ならないよ」




笑って別れる。



前々世では、ずっと戦ってきた敵だけど、今世では友達のような関係といえた。




記憶があるからこそ不思議な感じ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る