1967年7月20日 日の出新聞 朝刊記事

「水神様のほこら」建立 地域の安全と豊穣ほうじょうを願う



██県の山間部に位置する██地区において、地域住民の協力により「水神様の祠」が建立された。祠は、近年この地域で頻発ひんぱつする水害への鎮魂ちんこんと、水の恵みへの感謝を込めて建てられたもので、完成を祝う盛大な祭事が7月15日に行われた。


この地区は、木々に囲まれた谷間にあり、長年水害に悩まされてきた。特に、昨年の集中豪雨では、土砂崩れと川の氾濫はんらんによって家屋数棟が流され、尊い命が失われたという。


地元住民たちは「水の怒りを鎮めるには、水神様をまつるべきだ」と古くから伝わる祠の設計を参考にして新たな祠を作る計画を立ち上げた。


地域の有志たちが一丸となって、建材を運び上げ、森の中にひっそりと佇む神聖な場が完成。大工の中村進なかむらすすむ氏(56)は「雨が降るたびに不安だった住民たちの心が、少しでも安らぐことを願う」と語る。


また、この地には「水神様」にまつわる古い伝説もあり、水害を防ぐために人々が神に供え物を捧げてきた歴史がある。その伝説によれば、水神様は人々の祈りを聞き届ける優しい存在だが、一方でその怒りに触れると大きな災いを招くとも言われている。地元の郷土史家である渡辺誠わたなべまこと氏(68)は、「祠が建立されたことで、古い伝承が現代に息を吹き返す。これは地域にとって重要な出来事です」と語った。


祠の完成を祝う祭事では、伝統的な神楽かぐら奉納ほうのうや供え物が行われた。また、地元の子どもたちも「水神様の歌」と呼ばれる古謡こようを披露。祠の前に立つと、静けさの中に神秘的な空気が漂うように感じられる。


「これで、また安心して暮らせます」と語るのは、田中幸江さん(42)。「水神様にお祈りすることで、この土地が安全になり、これからも豊かでいられることを願っています」と語る表情には、安堵あんどの色が見えた。


祠の完成をきっかけに、地域全体の絆がさらに深まり、水害への備えも進められることを期待されている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る