旅行ジャーナリスト 我妻美乃梨②
新幹線の窓の外に広がる風景は、木々が生い茂る緑一色の田舎を映す。私の膝の上に置かれたノートの表紙を、無意識になぞりながら胸の奥は静かにさざ波のように立つ。
この取材は私が取ってきた仕事であり、期待感を膨らませここまで来たはずなのに、目的地が近づくにつれ、何とも言えない緊張が少しずつ体を侵食する。
赤ん坊を抱えた女性の姿が映るあの動画が、見た時から毎日脳裏をかすめた。私は霊的なものに特別な興味がある。
オカルト特集は、普段なら別の専門記者に任せてしまうことが
画面越しに見たあの女性の姿が、異様な存在感を帯びていたから。
もしかしたら私は、ただの旅行ジャーナリストとしてこの地に向かっているのではなく、知らず知らずのうちに引き寄せられているのかもしれない。
平静とした車内に響くアナウンスは目的の駅まであと数分だと告げる。私はノートを閉じ、真っ直ぐに背筋を正す。
駅に到着し、ホームから外に出ると思ったよりもひんやりとした空気が体全体を撫でた。そして待機していたタクシーに私は乗り込んだ。
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