第8話
久しぶりに会う友人らしき人物達と会話をしながらゆっくりと登校する学生達が、始業式開始の9時へと迫ってきてやがて必死な形相で走ってくる学生達へと変化し始めた頃、知っている人影が校門前に姿を現した。
全力で走る男女二人…男の方は茶髪で、遠くから見れば、少し優男のような雰囲気を感じる。
そして女の方はと言うと、遠くからでもわかる程の美少女オーラを出しており、現に慌てて走っていた学生達は皆、彼女を見て足を止めている。
男の方は知らないが、恐らくあれが主人公だろう…そして、その男と一緒にいるのがこのエロゲの最初に登場するヒロイン、
ゲームをしているのに男を知らないと言ったのは何故?
確かに、ゲームをやっているのならば大抵主人公の事を知っているだろう。
しかしこのエロゲ、実は主人公のことは名前も出なければ詳しい描写がされていないのだ。
確か制作陣からは『名前をプレイヤーが決め、あえて主人公を詳しく描かないことでプレイヤーが物語の主人公であるように見せ、よりゲームを楽しんでもらうため』と言っていたような…
閑話休題。やがて主人公達が窓の死角へと行ったので、俺は外から自分の持ってきた小説へと目を向ける。
前世から俺はオタクだったので、当然ジャンルはラノベである。ラノベは至高。
暫く小説を読んでいると、「間にあった〜!」と少しだけ大きめの声が聞こえ、すぐ後から「あんたが早く起きていれば、ゆっくりと登校できたわよ」と少し不満げに言う声が聞こえた。
チラリと目を向けてみると、そこには先程よりもはっきりと見える主人公達の姿があった。
主人公は遠目からでも優男のように見えたが、近くで見ても優男だった。
顔は童顔よりで、身長は180に近いのか少し高く見える。大人しそうであり、どこか抜けているような雰囲気がある。
山里は主人公君と違い、ゲーム通り。
主人公と同じで綺麗な茶髪をポニーテールにしてまとめ、目尻がつり上がっており強気の雰囲気を醸し出しており、性格は雰囲気通りのツンデレ。
スタイルはスレンダーであり、スカートから覗くシミ一つない色白の肌は下手なモデルより山里の方が綺麗だと言えるだろう。
他の生徒も同じなのか、山里に対して一部が熱い視線を送っている。
その間も山里は主人公と会話をしており、少し時間が経つと教室の前から男の教員が入ってきた。
「立ってる奴は座れよ〜。…よし、全員いるな。それじゃ、今から始業式があふから、全員体育館へ移動だ。」
俺は小説を鞄へと戻し、廊下で並んでから体育館へ移動する。
何故こうも学生では並んで体育館へ行かなければならないのか…前世でもそうだったが、俺にら理解が出来ない。
集団行動のためだろうか?だとしてもこんなことは社会に出てから使わないと思うが…
「おっと」
「ごめん、少しぼーっとしてた」
「いや、大丈夫だよ」
考えながら歩いていると、不意に前に立っていた人が止まり、気付かなかった俺は軽くぶつかってしまった。
すぐに謝ったからか、前の人は許してくれた。
中には骨が折れたから慰謝料とかほざく馬鹿がいるが…相手がそんなことをしなくて助かった。
そんなこんなで暫く待っていると、やがて列は進み、俺達は体育館の中へ入った。
ゲームだとフリーイラストのようになっていたが…やはり現実であるだけに、ゲームでは映っていなかった場所などもきちんとある。
一年の時はあまり見ることはなかったが…時間もある程度経って、改めて見ると少し感慨深く感じるものだ。
俺は周りから見て挙動不審にならない程度に体育館を観察し、ゲームでは映ってなかったところを発見する度に心がワクワクしていた。気分的には自分の知らない面白そうな玩具を買ってもらった子供だった。
「それでは、始業式を始めます。一同、礼」
体育館を観察し続けていると、いつの間にか始業式が始まる時間となっており、不意に聞こえた礼の言葉に慌てて頭を下げた。
それからはどこの学校と同じようなプログラムで始業式は進んでいった。
やがて始業式が終わると、「一同、着席。…暫くお待ちください」と教頭から言われ、用意された椅子に座って隣同士で会話を始めた。
会話の内容はざっと3つ。一年生のこと、学園の5大美少女のこと、そして担当教員のこと。
一年生のことは単純で、可愛い子はいないか?かっこいい子はいないか?などと言った話。
学園の5大美少女はゲームのヒロイン達のことで、山里もその内の一人である。
5大美少女の他にも、3大美女(一人は美女か議論されているが)というのも存在する。
勿論、5大美少女も3大美女もゲームのヒロインなので後にわかるので省略する。
そして、担当教員も一年生の話と対して変わらない。女子であればイケメンの先生がいいなとか、男子であれば胸の大きい先生がいいとか、そんな話だ。
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