天国暮らしのユラ〜疲れ果てた後は天国で〜
こおと
序章
異世界より天国で
「ユラよ。あなたはまだ若いにも関わらず、マンホールに落ちてそのまま亡くなりました。あまりに不幸な魂。異世界に転生か、異世界への転移を選びなさい」
目の前で神々しい光を全身から噴射している女神はそういった。
だけどーー
「天国で」
ーー転生とか転移とか、もうどうでもいいんだよ。
ユラにとって、これからの人生を決めるための選択は、意味がなくなっていた。
「え? ……こほん。転生か転移かを選べと言ったのですが?」
「でも、前にそれを選ばせてもらった時には天国もあったよね?」
その時はまだ数回だったから結局天国を選ぶことはなかったのだけれど。
神は狼狽える。顔まで光っていて表情は見えないはずなのに、戸惑いの感情がビンビンと伝わってくる。
「まあ確かにありますが、本当にいいんですか? 一度天国に行けば、もう二度と生まれ変わることはないんですよ? 本当にいいんですか?」
「うん。もう、疲れたから。あと、もうこの質問はしないで。僕は絶対に天国に行くから」
最初の転生で、神様は、とんでもない選択肢を出してきていたらしい。
一回目の人生で天国を選ぶ人とか果たしているのだろうか。
ユラは逆にそれが気になった。
「疲れた……とは?」
「あっ、神様ががここの常連の僕を知らないってことは、割と新神なのかな?」
「まあ、確かにここ数十年で一人前として新しくここにきたばかりですけど」
「なら知らなくても仕方がないね」
ユラは肉体年齢はまだしも、精神年齢なら新人の神を遥かに超えている。
それも神様が魂にくっつけた特殊な能力が原因なのだが。
「【完全記憶】ってわかる?」
「それぐらいは知っていますよ。一度覚えたことは絶対に忘れないとか」
学生のテスト前や覚えておきたいことをメモする時間を減らしたい時などはどうしても欲しくなってしまう能力だ。
「僕さ、その【完全記憶】持ってるんだけど……」
「めちゃくちゃすごいじゃないですか」
そんな素晴らしい能力を持っているにも関わらず、頑なに天国を希望するのはなぜなのか。
「すごくないよ。生まれ変わる前の記憶まで全部持ち越しちゃうんだから。神が作った能力だとしてもこれだけは言わせてほしい。これは欠陥品だよ」
いくらなんでもそれは失礼だろうーー、ユラの目の前にいる神が文句を言おうとしたその時ーー
「はーい、突然失礼しますね〜」
「あっ、ゼウス様。お久しぶり!」
「ぴゃっ!!」
ーー空間を割って入ってきたのは最高神ゼウス。
新人神様が突然髪を数本一気に引き抜かれた時のようなすっとんきょうな悲鳴をあげているが、一方のユラはものすごく軽い感じでゼウスに話しかけていた。
「ゼゼゼゼゼ、ゼウス様!?」
「そうそう、みんなの最高神ゼウスだよ〜」
最高神ゼウスは、非常にノリのいいイケイケお兄さんだった。
「ユラくん。面白いでしょ? 転生させる時はびっくりしたな〜、本当にさ〜」
そう。
このゼウスこそが、ユラの数回目の転生の時に選択肢を出してきた、たまたまサボってて転生を担当した神である。
神界を統治している神のため、呼ばれていなくてもやってくる。来てほしくない時もどこからかやってくる。
それがゼウスという神だった。
「ゼウス様。最初に会ったのは何年前でしたっけ?」
「う〜ん、確か、わからない万年?」
「14806年だよ。ゼウス様」
「あれ? そうだっけ? そうだとしたら人の中で一番オレと仲がいいね」
「それは嬉しい新事実!」
「「あははははは」」
新人神様を除け者にして、ユラとゼウスは楽しそうに話し始める。
ーー人と神が楽しそうに話している!?
新人神様にとって、それはとても衝撃的なことだった。神である自分ですら、個人的に話したことはないというのに。
「じゃあユラくんは行先もう天国にしちゃっていいんだね?」
「うん、構わないよゼウス様!」
「天国もさ、一応天界の一部だからさ、……時々会いに行ってもいい?」
恥じらいながらも願う乙女のように上目遣いをする最高神ゼウス。
「もちろん! というより、神界ってほとんどゼウス様が管理してるんでしょ!」
新人神様がゼウスの姿を初めて見たのは神様として正式に働き始める時。
地球でいう就任式の時だ。
その時の姿は最高神としての威厳があり、大変長々しい話をしていた。
「よし、準備できたよ〜! とりあえずいつでも会いに行けるから天国に送っちゃうね!」
「わかった。じゃあ、ゼウス様またね!」
ヒラヒラと手を振りながら、ユラは天国に転送されていった。
ーーーーーーーーーー
新しく書いてみました。
完全に思いつきののんびりライフ物語です。
次の更新予定
2024年11月15日 19:03 毎日 19:03
天国暮らしのユラ〜疲れ果てた後は天国で〜 こおと @waonn_towa
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